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AI導入支援会社の選び方|工程に分解して「誰に何を頼むか」を見極める

2026/6/12

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「AIを業務に活かしたい」そう思って「AI導入支援」を提供している会社に何社か問い合わせてみたものの、各社の言うことがまるでバラバラで、かえって分からなくなった——こうした声をよく耳にします。

ある会社は経営戦略やビジョンの話に終始し、ある会社は自社のツールを軸に提案を組み立て、また別の会社は「作るものが決まっていれば作ります」と言う。どれも嘘を言っているわけではないのに、各社の守備範囲が違うために、見ている景色がそれぞれ異なります。
社内に持ち帰っても「まずは大手に頼んでおけば安心では」「いや、その前に研修からでは」と意見が割れ、決め手がないまま時間だけが過ぎていきます。

本記事では、「おすすめAI導入支援会社○選」のような会社名のランキングではなく、AI導入をどう分解して捉えれば、依頼先ごとの守備範囲のズレに自分で気づけるのか、という見方をします。
自社の状況を工程に分解し、依頼先タイプ別の比較表を使って「どの工程を、誰に頼むか」を判断するための軸を解説していきます。

「どこに頼むか」で止まってしまう理由

生成AIを業務で使う企業は、ここ数年で確実に増えました。
帝国データバンクが2026年3月に全国23,349社を対象に実施し、10,312社から回答を得た調査では、生成AIを「活用している」と答えた企業は34.5%にのぼっています(出典: 生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)— 帝国データバンク)。
文章の作成や要約、情報収集といった個人の作業を中心に、AIはすでに多くの職場に入り込んでいます。
この記事を読んでいる方も、ChatGPTやNotion AIを自分の仕事で触った経験があるかと思います。

ところが、同じ調査が示す課題の中身を見ると、別の景色が浮かび上がります。
活用にあたっての懸念・課題として、「情報の正確性」(50.4%)に次いで多く挙がったのが「専門人材・ノウハウ不足」(41.3%)であり、さらに「活用すべき業務の範囲」(40.0%)が続いています。

つまり多くの企業は、AIを使いたい気持ちはあるのに、社内に進められる人材やノウハウがなく、そもそもどの業務に何をすればよいのかが定まらない、という地点で立ち止まっているのです。

社内に人材とノウハウが足りないなら、外部の力を借りればいい——多くの企業が自然とそう考えます。けれども、ここで冒頭の壁にぶつかります。
頼ろうとした先の各社が、まったく違うことを言うのです。

なぜそうなるのかというと、「AI導入支援」という看板は同じでも、各社の得意な領域が違うからにほかなりません。

戦略を描くのが得意な会社、業務の流れを設計するのが得意な会社、システムを作るのが得意な会社、自社のツールを提供する会社——それぞれが自分の得意な工程から景色を語るので、発注側には全体像が見えなくなります。

本記事では、どんな会社にも得意な工程と不得意な工程があり、すべてを高い水準でこなせる相手はとても少ないということを前提としています。
それでも自社に合う依頼先を見つけるために、「いい会社を探すこと」ではなく、「自社に必要な工程を見極め、それを相手の得意工程と突き合わせる物差し」を持てるようにすることを目的としています。

「AI導入」と一口に言っても、目指す「重さ」は違う

依頼先を見極める前に、まず自社の側で掴んでおきたいことがあります。
それは、「自分たちはAIで、どこまで踏み込もうとしているのか」です。同じ「AIを導入したい」という言葉でも、思い描いている中身の重さは、人によって大きく違います。
各社の話がバラバラに聞こえるのは、この「重さ」の認識が、発注側と各社の間でそろっていないことも一因です。

AIの使い方は、軽いものから重いものまで、おおよそ4つの段階に分けて捉えられます。

第1段階は、汎用のチャットAIをそのまま使う形です。
ChatGPTやClaudeに話しかけて文章を作る、要約させる、といった使い方で、個人利用の延長線上にあります。

第2段階は、すでに使っている業務ツールに付いているAI機能を使う形です。
表計算ソフトやチャットツール、議事録ツールに搭載されたAIを、その製品の範囲内で活用します。

第3段階は、AIを自社の業務プロセスに組み込む形です。
「問い合わせが届いたら自動で記録し、AIが回答案を作って担当者に通知する」といったように、複数の作業やシステムをまたいで仕組みとして動かします。

第4段階は、自社専用に構築する形です。
自社のデータを学習させたり、独自のシステムとして作り込んだりする、いちばん重い形態です。

個人利用が進んでいる読者の多くは、第1段階から第2段階のあたりは既に活用されているかと思います。
一方で、業務に大きく影響する第3段階や第4段階になると、急に開発や設計の世界が顔を出すため、難易度が高くなります。

自分がどの段階を目指しているのかが曖昧なまま問い合わせると、各社は自分の得意な段階の絵を描いて返してきます。
戦略を描く会社はいちばん上流の構想を、ツールを提供する会社は自社製品で実現できる範囲を、開発会社は作り込みの世界を見せてくる。
話がかみ合わない正体は、ここにもあります。

ただし、目指す段階の見当がついても、それだけで「誰に頼むか」までは決められません。
なぜなら、軽い段階であれ重い段階であれ、AI導入をいざ進めるとなると、必ずいくつかの工程を通ることになり、依頼先の得意・不得意は、その工程の上で分かれるからです。

そこで次は、「重さ」ではなく「工程」という物差しに持ち替えます。

AI導入を「構想・設計・実行」の工程に分けて見る

ここからが、依頼先の守備範囲のズレを見抜くための、いちばんの物差しになります。
先ほどは「どこまでやるか」という重さで見ましたが、今度はそれを実現する過程を、時間の流れに沿って工程に分けて捉えます。

AI導入は大きく、構想・設計・実行の3つの工程に分けられます。
一般的なAI導入プロジェクトでも、対象業務を決め、PoC(試しに小さく作って、本番の運用に載せられるかを検証すること)というゲートをくぐってから本番の開発・運用へ進む、という段階を踏むのが定石です。
PoCは「使えそうか」を雰囲気で確かめる実験ではなく、本番移行の可否を判定する関門として設計するほうが失敗しにくい、と整理されています(出典: AI導入 PoCとは?テーマ選定、評価指標、本番移行までの進め方 — ファネルAi)。

この3工程を、もう少し細かく開いてみましょう。

構想の工程には、「何のために、どの業務にAIを使うのか」を決める目的設定と対象業務の選定が含まれます。ここがぼんやりしていると、後のすべてが揺らぎます。

設計の工程は、いくつかの作業に分かれます。

対象業務の流れをほどいて「どこにAIを差し込むか」を考える業務プロセス設計。
AIに渡せるように社内のデータを整えるデータ整備。
「何を、どんな条件で、どう動かすか」を具体的に決める要件定義。
そして、目的と要件に照らして「どのAI・どのツールを使うか」を選ぶツール選定です。

実行の工程が、実際に作って動かし、現場で使われる状態まで持っていく実装と定着です。

そして、それぞれの工程には、頓挫しやすい「つまずき所」があります。

構想では、目的が曖昧なまま「とにかくAIで何かを」と走り出してしまうこと。

設計では、
業務の流れを見直さずにAIだけ乗せようとして業務プロセス設計を飛ばすこと、
AIに渡すべきデータが社内に散らばっていて使えないこと、
そして「だいたいこんな感じで」と要件定義が甘いまま開発に渡してしまうこと。

実行では、システムは完成したのに現場の運用に乗らず、作って終わりになってしまうこと。

この工程での要素を意識しておくと、依頼先の話を「この会社は、私の必要な工程のうち、どこをカバーしてくれるのか」という目で聞けるようになります。
次の章では、その地図の上に、依頼先タイプを重ねていきます。

依頼先タイプ別の得意・不得意をマトリクスで見る

世の中の「AI導入支援」は、おおまかに次の5つのタイプに分けて捉えると、守備範囲の違いが見えやすくなります。
いずれも役割が違うだけで、優劣の話ではない点を先にお断りしておきます。

戦略コンサルは、経営の視点から「AIで何を目指すか」という全社の構想を描くことを得意とします。

IT・DXコンサルは、業務改革やDXの文脈で、業務の流れを設計し直し、要件やツールの方針まで落とすところに強みがあります。

システム開発会社・SIer(システムを組み上げて納める事業者)は、実際に作って安定して動かす、開発と実装と運用の担い手です。

SaaS・ツールベンダーは、自社が提供するAI製品を軸に導入を支援する立場です。

研修会社は、社員のリテラシーを底上げし、AIを使える人を育てることを役割とします。

この5タイプを、先ほどの工程の地図に重ねると、得意・不得意のクセが見えてきます。
下の表は、各タイプがどの工程を得意とする傾向にあるかを、◯(得意)・△(条件つき・限定的)・×(守備範囲の外)で示したものです。
あくまで一般的な傾向であり、個々の会社によって幅がある点はご留意ください。

依頼先タイプ

目的設定

業務プロセス設計

データ整備

要件定義

ツール選定

実装・定着

戦略コンサル

×

×

IT・DXコンサル

システム開発・SIer

×

SaaS・ツールベンダー

×

研修会社

×

×

×

×

表から読み取れることを、いくつか言葉にしておきます。

まず、左右の端で得意分野がきれいに分かれている点です。
戦略コンサルは構想側に強い一方で、データ整備や実装といった右側はそもそも守備範囲の外です。

逆にシステム開発・SIerは作って動かす右側に強い半面、「そもそも何のためにやるのか」という目的設定は、依頼側が決めて持ち込む前提に立っていることが多いと言えます。

戦略だけを語る会社と、作るだけを請ける会社が、まったく違うことを言っていたのは、両者が地図の反対側に立っているからだった、というわけです。

SaaS・ツールベンダーは、自社製品の範囲ではツール選定から実装・定着まで頼りになりますが、その「自社製品の範囲で」という前提があります。
支援が自社製品を前提に組み立てられるため、複数の選択肢を中立に比較したい段階や、製品の枠を越えた目的設定を求める段階では、別の企業のほうが向く場合があります。

研修会社は人を育てる工程に役割が限られ、業務設計や開発までは担いません。
「まず研修から」という社内の声は、人材育成という一工程としては正しくても、それだけでAI導入そのものが進むわけではない、と整理できます。

ここで注意したいのは、現実の会社は、この5タイプにきれいに収まるとは限らないことです。
複数の工程を横断してカバーする会社もありますし、同じ「コンサル」を名乗っていても、得意な工程は会社ごとにまるで違います。

ただ、どこからどこまでを実際に担えるのかは、タイプ名や看板からは読み取れません。
その会社の過去の事例や実績、もともと何を強みに育ってきた会社なのかという背景を確かめ、「御社は、どの工程から、どの工程までを、どのように担っていただけるのか」を具体的な言葉で説明してもらうことも欠かせません。

広くカバーできるように見える会社でも、それぞれの工程をどれだけの深さで担えるかは別の問題です。
この表は、唯一の正解を指し示すものではなく、自社に必要な工程と、相手が実際に担える工程を突き合わせるための道具として使ってください。

工程のつなぎ目を減らす

工程ごとに、どのタイプの依頼先が向いていそうかが見えてくると、最後にもうひとつ、見落としやすい落とし穴が浮かび上がります。
それは、工程と工程の「つなぎ目」です。

AI導入の現場を支援する立場からいくつかのプロジェクトを見ていると、頓挫が起きるのは、ひとつの工程の中というより、担い手が切り替わる継ぎ目であることが少なくありません。

たとえば、戦略コンサルが立派な構想の報告書をまとめ上げたとします。
けれども、それを受け取って実装する別のベンダーに渡した段階で、「この戦略は、うちの現場の実際の流れに合っていない」と気づきます。

構想と実行の担い手が分かれていて、両者の間に業務プロセス設計という橋がかかっていなかったために、報告書が報告書のまま終わってしまうのです。

逆向きの溝もあります。
「だいたいこういうものを作ってほしい」と要件の固まりきらないまま開発会社に渡すと、たしかに動くものは出来上がります。
けれども、現場の運用には乗らず、結局使われない。 要件定義と実装はつながっていても、その手前の業務プロセス設計や、その後の定着の工程が誰の担当でもなかったために、「ツールは入ったが使われない」状態に陥ります。

つまり、それぞれの工程を誰かが担っていても、工程の受け渡しに責任を持つ人がいなければ、つなぎ目に溝が生まれるということです。
依頼先を選ぶとき、各社の得意工程を確かめるのと同じくらい、「自社が必要とする工程の受け渡しが、誰の責任で、どうつながれるのか」を確かめておく必要があります。

カバーしている範囲が広い依頼先であれば、このつなぎ目の溝は生まれにくくなります。
構想から実装までを同じ担い手が続けて見られるぶん、受け渡しのたびに認識がずれる余地が小さくなるからです。
ただし、前の章で触れたように、広く担えることと、それぞれの工程を深く担えることは、別の問題です。
一社にまとめて任せて継ぎ目を減らすのか、工程ごとに専門家を選んで深さを取るのか——どちらを選ぶにしても、つなぎ目を誰がどう埋めるのかは、契約の前に必ず確認しておきたい論点です。

複数の依頼先を組み合わせるなら、その継ぎ目を自社の誰かが責任を持って握る、という覚悟がいります。

まとめ

最後にあらためて、どんな会社にも得意な工程と不得意な工程があり、すべてを高い水準でこなせる相手はとても少ないといえます
だからこそ、AI導入を工程に分解し、自社に必要な工程と相手の得意工程を突き合わせることが、選定の本質になります。

各社の話がバラバラに聞こえるのは、どこかが間違っているからではなく、各社が得意とする工程が違うからでした。

「AI導入」をひとかたまりで捉えず、まず自社が目指す重さの見当をつけ、構想・設計・実行の工程に分解する。
その上に依頼先タイプの得意・不得意を重ね、どの工程を誰に頼むかを突き合わせる。
タイプ名を鵜呑みにせず、相手が各工程を実際に担えるのかを実績や背景で確かめ、工程と工程のつなぎ目を誰が握るのかまで見届ける。

その意識をもった状態で各社と話せば、どこが自社に合うのかは、これまでより見極めやすくなっているのではないでしょうか。

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