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AI時代に対面が最高位の仕事になる理由

2026/6/4

株式会社deflag CEO & Founder

佐々木 陽

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  • # 経営者・役員

  • # AI

ある日、久しぶりに連絡をくれた知人にランチに誘われた。

特に議題はない。ただの近況報告と食事。
「この時間、もったいないかな」と正直思っていた(笑)。

でも実際に会ってみたら、話があちこちに飛ぶうちに3つの新しいビジネスのヒントが出てきた。そのうちのひとつは、いま本当に動き始めている。

AIがどんどん仕事を変えていくなかで、この体験から逆説的な確信が生まれた。

デジタルと自動化が進めば進むほど、人が人と会うことの価値が最上位になっていく。

なんでそう思ったのか、そこから私が始めた実践とあわせて書いてみます。


テキストと AI が「仕事の構造」を変えた

SlackやNotionが浸透して、文字で仕事を進めることは完全に市民権を得た。
会議を開かなくても意思決定できるし、対面でなくても情報共有できる。非同期でプロジェクトが動く。

Deflagでも社内コミュニケーションのかなりの部分をテキストベースに変えた。
移動や「会議のために会議をする」みたいな時間はずいぶん減ったと感じている。

そして次の波がもう来ている。AIエージェントだ。

テキストで仕事を進める基盤が整ったことで、今度はAIが「入力」と「出力」を自動化できる環境が揃ってきた。

定型レポートの作成、データ集計、メールの下書き、議事録——これらは今後数年で、大半が自動処理される世界になるんじゃないかと思っている。
SFAへの入力も、週次レポートのまとめも、提案書のたたき台も、人が手を動かさなくていい時代が来る。

じゃあその先に何が残るのか。

「自動化できない仕事」だ。
文脈の読み取り、感情の解像度、偶発的なアイデアの連鎖。そして、人と人が対面で生み出す化学反応。

AIがどれだけ進化しても、ここは人間の領域であり続けると思っている。


効率化が「置いてきぼり」にするもの

生産性を意識して仕事の密度を上げていくと、ある種のことが自然と削られていく。

  • 目的のない雑談

  • ふとしたアイデアフラッシュ

  • 3年後・5年後の展望をぼんやり語る時間

KGIに直結しないし、短期のROIが見えない。
週次レビューで「この雑談で何が進捗しましたか?」と聞かれても答えられない。
だから効率化の名のもとに、真っ先に消えていく。

でも冒頭のランチが教えてくれたのは、「効率の外」にこそ新しいビジネスの種が眠っているということだった。

異業種の経営者との会食でも同じことが起きた。
近況報告のつもりが話が脱線して、まったく別の市場の話になって、そこから Deflagがまだ取り組んでいない領域のヒントが生まれた。

カレンダー上では「食事代」で計上されるその2時間が、その週で一番ROIが高かったかもしれない(笑)。

効率化って、要は「既知のゲームをうまくやること」なんですよね。でも非連続成長は「別のゲームを発見すること」から始まる。

はみ出しからしかイノベーションは生まれない。

効率化だけを追求し続けた成長曲線は線形になる。改善は積み重なるけれど、跳躍は起きない。

スタートアップの起業・EXIT、大企業での新規事業、SaaS経営の伴走——いろんな現場を経験してきたなかで、この違いについては、かなり確信を持っている。


対面が「最高位の仕事」になる理由

Web会議が浸透して、顔を合わせるコスト自体は劇的に下がった。移動ゼロで画面越しに話せるし、これ自体はとてもいい変化だと思っている。オンラインでできることはオンラインでやればいい。

でも面白い逆説が起きている。

オンラインが当たり前になったからこそ、リアルで会うことの希少価値が上がってきた。

Web会議でカバーできる業務はそちらに移行する。すると、わざわざ時間と移動コストをかけて対面で会う場面は、「Web会議じゃ代替できない価値」を生む場面に自然と絞られていく。

対面でしか生まれないものって、何だろうと考えてみると——。

  • 議題の外で生まれる偶発的な会話

  • 相手の表情や空気感から読み取れる文脈

  • 「また会いたい」という感情的なつながり

  • 食事や移動という身体的な共有体験

AIが議事録を取って、資料を作って、メールを送ってくれる世界になると、こういう体験はむしろ際立った価値を持つようになると思っている。

AIが処理できないものが最も価値を持つ、というのは経営の論理としてシンプルな帰結だ。

「無料で手に入るもの」の価値は下がって、「希少なもの」の価値は上がる。
Web会議がほぼゼロコストで使えるようになったいま、対面の時間は相対的に贅沢品になってきた。

その贅沢を意図的に使いこなせる人が、次の時代の示唆を先に手に入れる。


私が実践する「会う時間」の比率設計

体感として気づいていたことを、今年から意図的に数値で管理し始めた。

私の「会う時間」の目標比率はこんな感じ。

  • 顧客:3割——プロジェクトの推進と信頼構築

  • 社内:5割——チームの方向性と意思決定の質を保つ

  • 異業種:2割——「効率の外」からの示唆と種の発見

この2割が、私的にはいちばん大事なところだと思っている。

実は社内の5割についても、同じ発想で動かしていることがある。
効率を追求した結果、逆に「あえて雑談しかしない時間」を設けるようになった。いわゆるオフサイトMTG だ。
業務の議題は持ち込まない。ただ話す。最初はちょっと不思議な時間だったけれど、これをやり始めてからチームワークが確実に上がった実感がある。
テキストとオンラインで業務が回るようになったからこそ、「目的のない対面」の価値がくっきり見えてきた感じだ。

顧客との対話には業務文脈がある。社内には共通の課題がある。どちらも「目的のある会話」だ。
でも異業種の2割は、アジェンダがない。何が生まれるか予測できない。だからこそ、効率を求める日常では真っ先に削られていく。

意識しないと、この2割は自然にゼロになる。「会う理由がない」から。
だから「設計」しないといけない。来月のカレンダーを開いて異業種の人との予定がなければ、今日入れる。ただそれだけの話だったりする。

「会う理由がない人と会う」——これがAI時代の経営者にとって、最も重要な仕事のひとつになるんじゃないかと、最近かなり本気で思っている。


経営者こそ「はみ出す時間」を意図的に持つといいと思う

効率化だけを追求すると、成長曲線は線形にしかならない。

同じ業界、同じ文脈、同じ顧客層——この中だけで仕事を磨き続けると改善は起きるけれど、跳躍は起きない。跳躍は、異なる文脈との接触から生まれてくるものだと思う。

もうひとつ、経営者として気になっていることがある。自分の行動が組織全体にシグナルを送っているという事実だ。

経営者が「効率の外」に踏み出さなくなると、組織全体が効率の牢獄に入りやすい。
「無駄を削れ」というメッセージが行き渡って、雑談がなくなり、予定のない時間が悪とみなされる。
気づいたら、会社からイノベーションの土壌が静かに消えていた——ということが起きる。

AIがオペレーションを引き受けてくれる時代だからこそ、経営者の時間は「考える・出会う・はみ出す」にシフトしていくべきだと思っている。

AI時代の経営者の役割は「AIに任せる仕事を決めること」だけじゃない。
AIには任せられない「対面の時間」を意図的に設計して、そこから会社の次の10年の方向性を見つけていくことだと思う。

オペレーションはAIに任せていける時代になってきた。
経営者にしかできないのは、効率の外に踏み出すことだと思う。


来週、予定のないランチを一つ入れてみてはどうだろう。目的のない会食を一つ、カレンダーに置いてみる。

AIが処理してくれた余白を、対面の「はみ出し」に使う。そのくらいのことが、意外と次のフェーズの入口になるんじゃないかと感じている。

株式会社deflag CEO & Founder

佐々木 陽

株式会社Deflag代表取締役CEO。リクルートでの大型サービスDX推進を経て、Oneteam Inc.を創業・売却。現在はDeflagにて100社以上の企業の戦略・AIインテグレーション・データ基盤構築を伴走支援。情報経営イノベーション大学(iU)客員教授。

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