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# AI導入
# 業務分解
AIを活用しないと、あなたの会社は潰れます——。
最近、こんな言葉をセミナーのタイトルやSNSの投稿で頻繁に見かけるようになりました。不安を煽るフレーズに引き寄せられ、数十万円を払って勉強会に参加する経営者が増えています。
AIの進化スピードが上がるほど、その隙を突くビジネスも増えていく。これは情報商材業界の構造的なパターンで、AIがその格好の舞台になっています。
私の会社Deflagは、業務課題の抽出・ワークフローの分解・サービス構築・システム構築を、これまで100社300プロジェクト以上実施してきました。
その経験から見ると、「AI活用」を掲げながら何も変わっていない会社と、本当に変わっている会社の間には、明確な違いがあります。
その違いは、ツールの選択でも予算の多寡でもありません。「何のためにAIを使うか」を最初に決めたかどうか、ただそれだけです。
AIの進化スピードは、人間の学習スピードをはるかに上回っています。
半年前に「最先端」だったモデルが、今では当たり前のように使われている。新しいツールとプレイヤーが毎月のように登場する。この加速感が、経営者の焦りを生みます。
その焦りに乗っかるビジネスが急増しています。知見も経験も実績もないまま、「AI活用支援」を高額でパッケージして売る会社です。
典型的なものが、経営陣向けのAI勉強会です。
半日のセッションに数十万円。「ChatGPTの使い方」「生成AIの最新トレンド」をまとめたスライドを見せて終わる。
経営者は「時代についていけた」という感覚を得ますが、翌月から会社の何かが変わることはほとんどありません。
問題は、こうした会社の多くに生産性改善や人手不足解消に向き合ってきたバックグラウンドがないことです。
AI以前から業務設計・ワークフロー改善・データ活用をやってきた会社だけが、AIをどこに当てれば効くかを正確に理解しています。そのバックグラウンドなしに「AI活用」だけを語る会社は、大体中身がありません。
「うちもAIを活用するぞ」と経営者が号令をかけた。この話、ここ1〜2年で非常によく聞くようになりました。では、その後どうなったか。
多くの会社で起きているのは、個人レベルの業務改善で止まるという現象です。
ChatGPTで議事録を要約する。メールの文章を整える。Excelのマクロを書いてもらう。こういった活用は確かに進みます。担当者レベルの生産性が多少上がる。でも、組織全体のワークフローは変わっていない。売上も、コスト構造も、根本的には何も変わっていない。
なぜこうなるのか。理由はシンプルです。業務を分解して「AIを当てるべきポイント」を特定しないまま、「AI活用」という言葉だけを掲げているからです。
ゴールのない手段選びが始まっている。これが、多くの会社で起きている「AI活用」の実態です。
勉強会を開いても、ツールを導入しても、業務の分解なしには変わりようがありません。
ここで少し立ち止まって考えてほしいことがあります。
AIで何ができるかを把握することは、もちろん大切です。ChatGPT、Claude、Gemini、Copilot——それぞれの特性を理解して、自社のユースケースに合うものを選ぶ。この知識は持っておくべきです。
ただし、それより先に決めるべきことがあります。
AIを使って「何をやめるか」。そして、浮いた時間で「何に集中するか」。
この2つを決める前にツール選定に入った会社は、ほぼ例外なく、個人の業務改善で止まります。
組織全体に展開しようとした瞬間に「で、何のために使うんでしたっけ」という問いに答えられなくなるからです。
AIはものすごいスピードで進化しています。プレイヤーもどんどん増えています。
でも、全てについていく必要はありません。「どのAIを使うか」は戦術の話です。「何に使うか」が戦略の話です。戦略なき戦術は、迷走です。
AIの進化が速いからこそ、振り回されない軸を先に持つ。
その軸が、「やめること」と「集中すること」の設計です。
実際に組織全体でAI活用が進んでいる会社には、共通した出発点があります。
ある企業では、AI導入の前に1ヶ月を「業務の棚卸し」に使いました。
営業担当者が1週間にどんな業務をどれだけの時間やっているかを可視化する。日報の入力、見積書の作成、社内報告、商談後のフォローアップメール——実際に分解してみると、本来の「商談・顧客との対話」に充てている時間が、業務全体の30%にも満たないことが明らかになりました。
そこから「これは人間がやらなくていい」「これは人間にしかできない」に分類する。その上で、「人間がやらなくていい業務」にAIを当てる設計をしてから、初めてツールを選定しました。
結果として、営業担当者が商談準備と顧客との対話に集中できる時間が増え、受注率が改善しました。これは、ツールを先に選んだ会社では起きない変化です。
プロセスを整理すると、こうなります。
自社の業務を分解する
「やめること」を決める(AIに任せるか、そもそもなくすか)
浮いた時間で「集中すること」を決める
その目的に合ったAIツールを選ぶ
この順番で動いた会社と、ツール選定から入った会社では、半年後の景色が全く違います。
AI導入支援を謳う会社を選ぶとき、一つだけ確認してほしいことがあります。
その会社は、AIが登場する前から「生産性改善」や「人手不足の解消」に向き合ってきたか。
生産性改善とは、業務を分解して、ムダを省いて、人とシステムの役割を再設計することです。これはAIが登場するはるか前からある、地味で泥臭い仕事です。この積み重ねがある会社だけが、AIをどこに当てれば効くかを正確に理解しています。
逆に言えば、バックグラウンドのない会社が突然「AI活用」を言い出したら、大体中身がないと思って間違いありません。
判断の目安として、いくつかの「怪しいサイン」をお伝えしておきます。
勉強会・セミナーの提供だけで支援が終わる
業務分解やワークフロー設計の実績が提示できない
「このツールを導入すれば解決します」とツールありきで話が始まる
セットアップ費用だけを取って、その後の伴走がない
本当に力のある会社は、業務設計・データ整備・ワークフロー改善をずっとやってきた延長線上でAIを使っています。「AIありき」ではなく「課題ありき」で動いています。
最後に、具体的なアクションをお伝えします。
① AIで何ができるかの範囲を、自分の手で把握する
ChatGPTやClaudeを実際に触って、「どんな業務に使えそうか」のイメージを自分の中に作る。
セミナーで学ぶより、実際に使ってみる1時間の方が何倍も価値があります。まずは自分が毎週やっている定型業務を一つ、AIに任せてみてください。
② 自社の主要業務を分解してみる
「自社の業務の中で、AIに任せられそうなものはどれか」を棚卸しする。
できれば主要な部門ごとに、1週間の業務時間の内訳を可視化してみる。営業組織であれば、純粋な商談・顧客対話以外に何時間使っているかが鮮明に見えてくるはずです。多くの場合、その数字に驚くことになります。
③ できなければ、業務分解から一緒にやれる会社に依頼する
業務の分解は、意外と自社だけではできません。「自分たちの業務が当たり前すぎて見えない」という問題が起きるからです。
その場合は、業務設計・ワークフロー設計の実績がある会社に依頼する。ただし、前述の通り「急にAIを言い出した会社」ではなく、地に足のついた実績がある会社を選んでください。
AIの進化スピードは、これからも落ちません。でも、追いかけ続ける必要はありません。
「何のために」「何をやめるために」「何に集中するために」AIを使うのか——この問いに答えを出した会社だけが、1年後に本当の変化を実感できます。
それ以外の会社は、また新しいツールが出るたびに「AI活用しなきゃ」と煽られ続けることになります。
経営者が決断すべきことは、ツール選定ではありません。「やめること」と「集中すること」の設計です。
その設計がある会社だけが、AIの進化スピードに振り回されずに、着実に変わっていけます。
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