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「便利になったのに、営業は難しくなった」AI時代の営業の核を考える

2026/6/8

株式会社deflag CRO

岩瀬陽平

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  • # AI導入

  • # 営業マネージャー

  • # AI

Deflag CROの岩瀬です。

最近、お客様とこんな会話を交わすことが多くなった。

「岩瀬さん、便利な道具は確かに増えたんですよ。でも、営業はむしろ難しくなった気がしませんか」

このコラムは、営業マネージャー/マーケ責任者/事業責任者/経営者の方に向けて書きます。
机上の戦略論ではなく、60社の現場で見てきた “実装の真実” を、率直に。


ウェビナーは満員なのに、着電が鳴らない朝

ある日、BtoBマーケ施策のウェビナー企画の相談を受けた。

聞いてみると、企画自体はうまく回っている。
お客様はちゃんと集まる。
アンケートの満足度も高い。

ただ、課題はそこからだった。

「ウェビナー後にお客様の名簿は手に入るんです。でも、着電率が低くて、結局案件化につながらない」

理由を一緒に紐解いていくと、いくつか具体的な変化が見えてきた。

法人電話はDX化が進み、転送モードやIVRが標準になっている。
代表番号にかけても、本人にはなかなかつながらない。

そもそも、お客様自身の情報収集の仕方が、ここ数年でまったく変わっている。
ウェビナーで一度顔を出すことと、商談の机に座ることの間が、以前よりずっと遠くなった。

業界としてもこの傾向は数字に出ている。

インサイドセールス支援を行うSALES ROBOTICSのレポートでは、ウェビナーで獲得した顧客接点の単価は 1万〜2万円 が相場で、ホワイトペーパー(4,000〜5,000円)の 2〜4倍 にあたる、と整理されている。

それでも「開催しただけで終わる」と語る現場が多いと聞く。

道具は揃ったのに、営業は難しくなった。

これは、その日の相談だけの話ではないように感じる。

着電率の低下。

顧客獲得単価の高騰。

受注単価の高騰。

そして、優秀な営業人材の不在。


私が回ってきた現場でも、似た声を本当によく聞く。

そしてもう一つ、最近よく耳にする言葉がある。

お客様自身が、こう言うのだ。
「AIを入れれば売上が上がる、というわけではないですよね」

お客様の方が、先に気づいている。


お客様の側で、4つの構造変化が同時に起きている

なぜ営業は難しくなったのか。

私の中では、顧客側で4つの構造変化が 同時に 起きている、と整理している。

1. 商談前に持っている情報量が、根本から変わった

これは肌感覚ではなく、複数の調査が同じ方向を指している。

セールステック企業6senseの調査では、BtoBの購買担当者は、購買ジャーニーの 約70% を、ベンダーと話す前に自ら情報収集して終わらせている、という結果が出ている。

国内でも、株式会社wibの独自調査では、決裁者の 84% が「営業担当者と接触する前に、購買を決定づける情報にすでに触れている」と回答している。

そしてGartnerが2026年3月に発表したセールス調査では、BtoBバイヤーの 67% が「営業担当者と話さずに購買を完結したい(rep-free experience)」と答えている。

さらに最近では、その情報収集の入口がGoogleからAIに変わっている。

ChatGPT、Gemini、Claude、Perplexityに “比較” を聞く購買担当者が、目に見えて増えた。

つまり、商談の机に着く前に、お客様はもう半分以上を済ませている。

そして、自分のペースで済ませたい、と感じ始めている。

“説明する営業” の役割は、急速に小さくなっていく。

2. 営業に求める役割そのものが変わった

10年前のお客様は、営業に “情報” を求めていた。商品の機能、価格、事例。

今のお客様は、その情報はもう自分で集められる。

だから営業に求めるのは、その先 —— “自分たちにとっての意味づけ” の方に変わってきていると感じる。

「うちで使うとどうなるか」

「事例の中で、自分たちと近いケースはどれか」

「結局、何から始めるのが現実的か」

業種や規模で会話の中身は違うが、共通しているのは “汎用の答え” ではなく “自分たち向けの答え” を求められるようになった、ということだ。

3. 連絡手段・接点の作り方が変わった

代表電話には出ない。

個人携帯はかかってこない。

メール、Slack、Notion、SNSのDM、ウェビナー、コミュニティ。接点は無数に増えたが、そのどれも以前ほど “強い接点” ではなくなった。

お客様への到達は、ピンポイントの1本ではなく、複数の接点の重なりで成立する時代になっている。

4. お客様自身も、AIで作業を減らしている

ここはあまり語られないが、現場で確実に起きている。

情報収集、議事録、要件整理、社内稟議のドラフト。お客様の側でも、AIで巻き取られていく作業が増えている。

つまり、AI化は営業側だけの話ではない。

営業と顧客の “両側” で、同時に進んでいる

だから接点の質も、求められる会話の中身も、丸ごと変わっていく。


では、AI時代の営業の核は、何に収斂するのか

ここからが本題だと感じる。

便利な道具は揃った。

顧客側の構造も変わった。

それでも残る、人の営業の核は何か。

私は、4つのステップの循環 に収斂していくのではないか、と感じている。

目的: 接触し続ける “関係値” を築く

これは、AI時代も変わらない。むしろ、より重みを増す。

“○○ なら、あの人” と想起される関係を切らさず維持し続けること。
ここを土台に置く。

手段①: 正しく顧客を理解する

ここで使いたいのは “解像度高く” ではなく、“正しく” の方だ。

Web上の情報、自社のCRMのデータ、商談の議事録。
情報量は十分にある時代だ。

ただ、それを “そのお客様の状態” として正しく読めているかは、別の話だと感じる。

何を欲しがっているように見えて、本当は何で困っているのか。

誰の意思決定がボトルネックなのか。

昨年と何が変わったのか。

ここを誤読すると、提案もフォローも全部すれ違う。

手段②: 理解をデータとして蓄積する

正しく理解した内容は、必ずデータとして残す。

個人の頭の中ではなく、組織が参照できる場所に置く。

理由はシンプルで、人は忘れる。そして担当も変わる。

データ化されていない理解は、半年後にはほとんど消えている。

手段③: 状態と悩みを言語化し、本人が気づいていないことに気づかせる

ここが、AI時代の営業の 最大の付加価値 だと感じる。

情報はAIに聞けば返ってくる。比較もAIがしてくれる。

ただ、お客様自身がまだ言語化できていない悩みを、外の視点で言語化して差し出すことは、AIには難しい。

「あなたの本当の問題は、ここではなくここですよね」

「他社では順番に解いていますが、今のあなたの状況だと、この順番ではうまくいきません」

これを、お客様が自分の言葉で言えるようになる前に、こちらから差し出す。

“気づかせる” までが、人の仕事になっていく。

手段④: 蓄積したデータを活かして発信し、想起され続ける

蓄積した理解は、そのまま発信の燃料になる。

お客様の状況や悩みのパターンを抽象化して、コラムやウェビナーやSNSに変換して返す。

すると、お客様の側にも “この人は分かっている” という想起が育っていく。

接触し続ける関係値は、こうしてまた強くなる。


手放していい仕事と、新しく必要になる力

ここまで読んで、「全部やるのは無理だ」と感じた方もいると思う。

私もそう思う。だから、手放す仕事の整理が必要だ。

手放すのは “人に依存するフォロー”

フォローは、思い切って手放してよい領域だと感じる。

フォローには、営業起因 のものと、顧客起因 のものがある。

営業起因とは、こちらの都合で “そろそろ連絡しないと” と動くもの。

顧客起因とは、お客様のWeb行動や検討動向に合わせて反応するもの。

どちらも、人がやり続けると必ず抜けが出る。

そして、抜けた瞬間に “関係値” が静かに薄れていく。

ここはAIに任せていい。むしろ任せた方が、抜けがなくなる。

新しく必要になる力は2つある

1つめは、お客様のAI活用度合いに合わせた提案

お客様がどこまでAIで巻き取っているかで、商談の入口も変わる。
すでに比較を済ませた相手に “説明” を始めても、もう刺さらない。

2つめは、データを “問い” に翻訳する力

データを見て “状態” を理解し、そこから “本人がまだ気づいていない問い” を立てる。
これが、商談を動かす最大の起点になっていくのではないか、と感じている。


量と質のループでもがく営業に、なぜ “余白” が必要なのか

ここまで書いて、もう一段だけ降りて話したいことがある。

営業活動には、量と質という永遠のテーマがある。

私自身は、どちらかと言えば “量” の方が本質に近い と感じている。

ただ、量をこなすには時間がいる。

質を上げるにも、正しい情報とデータ量がいる。

そして改善を回すにも、現場には立ち止まって考える余白がいる。

このループの中で、営業は日々もがいている。

時間がない。データもない。改善する余白もない。

だから、私たちDeflagは “営業の余白を作る” 仕事をしている。

事務作業を自動化することは、目的ではない。

余白を作って、量と質を回せる状態に戻すことが、目的だ。

ここはずっと一貫している。

AIで仕事をなくす話ではなく、AIで余白を作る話。

余白の先で、人は “状態を言語化して気づかせる” 仕事に集中する。


“接触量の競争” から、“状態の解像度と問いの精度の競争” へ

少し長くなった。

最後に、今日の整理をひとことで残しておきたい。

これからの営業の優劣は、接触量の競争では決まらない のではないかと感じる。

お客様の状態をどれだけ正しく読めるか。

読んだ理解をどれだけデータとして残せるか。

そこから、本人が気づいていない問いをどれだけ精度高く差し出せるか。

そして、それを発信に翻訳して、想起され続けるか。

この一連の循環をどれだけ滑らかに回せるかが、これからの営業の差を作るのではないか、と感じている。

そのために、手放せる仕事は手放す。

余白を作って、人にしかできない仕事に時間を注ぐ。

この順番だと、私は思っている。

もしこの記事を読んで、頭の中で何か動くものがあれば、いつか一度お話ししてみたい。

“あなたの営業の余白は、今どこにありますか”

そんな問いから、また次にお会いできたら嬉しい。

株式会社deflag CRO

岩瀬陽平

インテリジェンス(現パーソルキャリア)で人材事業に従事後、アイセール(現クロス・オペレーショングループ)執行役員として全国110社超のMA導入・インサイドセールス立ち上げを支援。その後、株式会社Labosを創業。現在はDeflagにて、営業の「型化」と伴走型支援を軸にクライアント企業の営業変革を伴走支援している。

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