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全員アナリストの時代と、これからのデータ組織

2026/6/8

株式会社deflag CDO

深川 泰雅

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  • # データ基盤

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これまでのデータ組織が引き受けてきた役割

「データ組織」「データ分析チーム」「アナリティクスチーム」。
社内でこういったデータ専門の組織を置くとき、多くの会社で、その役割や組織の作り方は似ていました。マネージャーがいて、その下にデータアナリスト、データエンジニア、データサイエンティストが並ぶ。
BIチームとAIチーム、基盤チームのような分け方をしているケースもあります。

呼び方が違いますが役割分担は明快で、

  1. データエンジニア(や、アナリティクスエンジニア)がデータ基盤を作り、

  2. データアナリストが分析してビジネスと接続し、

  3. サイエンティストがモデルを組む

そして最終的な役割は、事業の問いに専門職が分析で応え、意思決定を加速することです。(例:ビジネスサイドが「この層の解約が増えた理由を見たい」と分析テーマを渡し、アナリストが数字を引いて結果を返す。)

この、経営や事業サイドに問いと仮説があり、一方で分析できる人が組織の中の一部に偏っている、という構造が変わり始めています。
オーダーを受けて分析結果を返す、中間の分業型の分析チームの役割は消えていきます。中途半端なデータ組織はもう要らなくなり、残るのは土台を整える人と、自分で決める全員であって、その間で分析を取り次ぐ層ではありません。

基盤の番人:EngineeringとEnabling

これまでデータエンジニアリングのチームは、パイプラインを作ってデータソースからデータを集約し、DWHへ接続し、そして使いやすい形に整形・加工することを役割としていました。

AI時代にデータの品質は極めて重要であるため、この仕事が重要なことは変わりません。
各部署の「仮説を持つ、非データ人材」が迷わず自分で分析できるように、データを分析しやすい形に変換し、現場の認知負荷を下げる。

変わるのは、ここに「標準化」というもう1つの仕事が加わることです。
データを整えて運ぶこと自体は重要であり続ける一方で、その整え方そのものをそろえていく「イネーブルメント」が要る。指標やデータモデルの定義をそろえ、命名をルール化し、ドキュメントに残して、誰もが同じ意味で同じデータにたどり着けるようにする。
法令に沿ったアクセス管理も含め、組織が安全に、迷わずデータを使える状態を保つ仕事です。

何を正しい数字とするかを決め、その定義をコードで保つ。
例えば、「前月の売上は?」と聞いて、同じ売上のはずなのに、聞くひとや聞き方によって数値が違ってしまいますよね。
エンジニアリングで品質を担保しつつ、標準化でその品質を組織全体に行き渡らせる。この両輪が要る、ということです。

現場の誰もが自分でクエリやグラフを作れるようになるほど、その出力をそろえ、検証できる土台を持つ組織と、持たない組織の差は開いていきます。
全員アナリストを成り立たせる土台を作り、データ活用を前に進める司令塔として、EngineeringとEnablingの両輪が必要になるということです。

全員Analyst:分析は職能から「全員が持つ一般教養」へ

これまで分析は組織の中の一部の職能が引き受けるものでしたが、これからはデータを活用する組織なら、事業や営業や経営の全ての人間が、自分で数字を調べ、示唆を出し、意思決定まで持っていく(分析を誰かに頼んで待つのではなく、自分の問いを自分で回す)のが前提になっていくと思います。

全員アナリストとは、全員が同じだけの専門スキルを持つことではありません。
Gartnerも、データの民主化は全社員に分析の専門性を求めることではない、と釘を刺しています(出典: Gartner, 2024)。
役割に応じて、自分が必要とする問いを自分で立てて回せる状態を指します。
経営は経営の問いを、営業は営業の問いを、マーケティングはマーケティングの問いを自分の手元で確かめられるということです。

AIが問いの摩擦を取り払い、自然言語で問えば数字が返るようになったことで、一部の人に閉じていた「自分で分析する」が多くの人の手に届きかけています。
AIによりデータを取り扱うことは平易になっていますが、同時に、

  • 軸を立てることの意味

  • 分布を見ることの意義

  • 実数と指数の取り扱い

  • 統計量の取り扱い

  • サンプリング

  • 統計的有意性

こういったデータを取り扱うお作法・アタリマエの理解は、全員に求められるようになるでしょう。

データサイエンスとMLエンジニア

データサイエンスとMLが、収益インパクトにつながるだけの規模の組織では、これらの役割は価値を増していくでしょう。金融の不正検知、製造の予知保全、小売の需要予測のように、モデルの精度がそのまま事業の成果になるケースです。

データが与える収益インパクトは、足し算ではなく、掛け算で効くものです。(売上を +○円積み増す、という効果ではなく、売上を1%増加させる、といったイメージということです。)

その判断が高頻度で、規模も大きく、自動化された予測が継続してペイする場面。一度組んだモデルが回り続け、人手では追えない数の判断を支えるなら、投資は見合います。

一方で、これらに当てはまらない規模の組織では、データチームの役割は「EngineeringとEnabling」だけに収束していくのではないでしょうか。
そして、データチームが整える基盤を用いた示唆出しや意思決定は、全てのビジネスメンバーに引き継がれていく。

残るAnalystの役割:客観の外に出て、事業を「決めきる」

これまでのアナリストは、客観的な立場からデータを示し、判断は事業側に委ねる、という距離の取り方をしてきました。
残る役割は、その逆です。
客観の外に出て、自分が決める側に立つ。正解のない問いに対して、データを根拠にしながら、最後は意思決定を引き受ける。

残る価値は、AIには難しい仕事です。
例えば、筋の良いセグメントの軸を切ること。何と何を比べ、どこで線を引けば事業の打ち手が見えるのか。
この「軸を決める」判断は、データから自動では出てきません。比較の枠組みそのものを設計する仕事だからです。

相関と因果を取り違えないことも、人に残る仕事です。
AIは相関を高速で並べてくれますが、何が原因で何が結果かを見立てるのは、事業の文脈を知る人の判断です。
ここを誤ると、正しく見える数字のまま、打ち手を間違える。

分析とは、言葉を定義することです。
「解約」とは何を指すのか、「優良顧客」とは誰のことか。その言葉を定め、組織の共通言語を作り、解くべき問題そのものを定義する。
良いアナリストとは、事業の文脈を読み、分析企画をし、適切な手法で処理して、それを人に伝わる形で表現できる人です。

残るアナリストに要るのは、企画力と、決めきる力です。
アナリストのスキルを持つ人は、役割がシフトし、これまで培ってきた力は武器になります。問いを立て、軸を切る力、比較対象を決める力、数字をストーリーにする力。分析のアンチパターンを知っていて、誤った読み方を避けられる統計のリテラシー。テーブルやDBの構造を理解していること。
こうした素地は、AIが数字を出してくれる時代にこそ効きます。新しい筋肉が要るだけで、これまでの筋肉が無駄になるわけではありません。

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