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AI時代の営業は「○○なら、あの人」で決まる。AIに任せていい仕事の話

2026/5/29

株式会社deflag CRO

岩瀬陽平

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  • # AI

  • # 営業マネージャー

Deflag CRO の岩瀬です。

ある会食で初めてお会いした方から、1年経って「紹介したい人がいる」と連絡をいただいたことがある。

このコラムは、営業の足元の数字に追われて顧客フォローが手薄になっている方、AIに何を任せていいか迷っている方に向けて書きます。机上の戦略論ではなく、60社の現場で見てきた "実装の真実" を、率直に。


ある会食で始まった、1年越しの紹介の話

ある会食でお会いした方がいた。

特段、お客様になり得る方ではなかった。ノリが合って、頻繁に会うわけでもない。

ただ、ことあるごとに会う関係だった。

会うたびに、お互いの活動を情報交換した。

その後、コロナで会えるタイミングは減った。

それでも、頻繁ではないが、ことあるごとにやり取りは続けていた。

1年ほど経った頃、向こうから連絡があった。

「紹介したい人がいる」

紹介をいただき、私はそこから、その方の事業を支援することになった。


このエピソードで、私が一番大事だと思っているのは、案件になったこと自体ではない。

双方の環境は変わった。それでも、一定の関係を維持し続けられたこと。

情報を交換し続けたこと。

相手にとって不快な連絡をしていなかったこと。

信頼に値する関係を、ゆるやかに築けていたこと。

そして何より、相手の中に "○○なら、岩瀬" という想起の枠が残っていたこと。

ここに、この数年で一番大事な営業の学びがあった、と私は感じている。


営業にとっての"顧客フォロー"とは、忘れられないことだ

営業の世界では、「顧客フォローが大事だ」とずっと言われ続けている。

定期的な接触、関係構築、ニュースの共有。

やるべきリストはたくさんあって、各社のCRMにも項目が並んでいる。

ただ、現場で実装してきた身として、私はもう少し本質的なところに線を引きたい。

顧客フォローの本質は、 "忘れられないこと" だ。

正確に言えば、お客様の側から "想起してもらえる関係" を、長く保ち続けることだ。

「この領域なら、あの人」

「この相談なら、あの会社」

「この話題なら、あの担当者」

お客様の頭の中で、自分や自社が "選ばれうる候補" として居続けること。

そこがすべての出発点になる。

なぜなら、お客様が動くタイミングは、こちらの都合では決まらないから。

1ヶ月後かもしれないし、3年後かもしれない。

そのとき、想起されているか、いないか。

ここに、営業の勝負が静かに集中している。


足元の数字に追われると、人はフォローを忘れる

ところが、現場ではこれが難しい。

営業には、足元の数字がある。

今月の予算、今四半期の着地、目の前の商談。

定期的にあの方に連絡しよう、と思っていても、気づくと数週間、数ヶ月が経っていることがある。

体調不良で1週間止まることもある。

繁忙期に他の仕事に手を取られることもある。

ふと思い出した時には、もう連絡しづらい間が空いていることもある。

私自身、何度もある。

ちゃんと連絡を続けられていれば、「いいタイミングで連絡くれたね」というポジティブな反応がもらえる。

そこから、関係が次の段階に進むこともある。

一方で、忘れた時のことは、

そもそも気づかれない。

失っているのは、未来の機会だ。

だから、損失が見えづらい。


人は忘れる生き物だ、と私は思う。

責めたい話ではない。

営業として真面目に走っているからこそ、

目の前の数字に集中しすぎて、 "想起され続ける関係" のメンテナンスが後回しになる。

これは、努力や根性で解決する話ではない、というのが、60社の現場を回ってきた私の実感だ。


新規架電が機能しなくなった時代の、当たり前の帰結

もう一つ、外側の事実として書いておきたいことがある。

知らない番号からの架電は、ほとんど取られなくなった。

私たち自身を振り返っても、知らない番号の着信は無視するだろう。

スマートフォンには、迷惑電話を自動で拒否する機能が標準で入っている。

つまり、 "ど新規一本槍" の営業は、もう成り立たない。

これはDeflagの営業資料でも整理している話で、新しいお客様との出会いを作るためのコストは、毎年上がっている。

ここに、もう一つの帰結が乗ってくる。

「一度出会った相手との関係継続が、次の商談を生む」

これは戦略論ではない。

新規開拓のコストが上がれば上がるほど、

既存の関係から生まれる紹介・再依頼の経済的価値が、相対的に上がる。ただの算数だ。


CROとして、マーケ・営業・CSを収益で串刺しに見ていると、このことが数字でも立ち上がってくる。

新しい1社と出会うために必要な投資。

既に出会った1人との関係を保つために必要な投資。

両者を並べたとき、後者を切らさない方が、1件の契約に至るまでの総コストは、圧倒的に低い。

"想起され続ける関係" は、目には見えにくいが、営業組織の最も大きな資産だ。


だから私はAIに、忘れない仕事をお願いしている

ここまでが、外側の話。

ここからは、私自身が現在やっている工夫を、率直に書く。

正直に言えば、まだまだできてはいない。

それでも、少しずつ仕組み化はしている。

私がAIに任せている仕事を、いくつか挙げる。

  • お客様の誕生日のアラーム

  • お客様のリリースやニュースが出たときの通知

  • そのリリースや課題に紐づいた "Tips" の下書き

  • 商談後、議事録から要点を抽出して、お礼メールを即時に下書きする

  • ToDoの管理と、漏れたものの再リマインド

これらはすべて、人間が "やらなきゃ" と思いながら、漏らしてきたものだ。

たとえば、お客様のリリースが出た瞬間に、

一言「素晴らしいですね、おめでとうございます」と送れる。

それだけで、相手の中の想起の枠は、少しずつ太くなる。

ただ、これを意志力でやり続けるのは、私には無理だ。

私は忘れるし、ニュースを見落とすし、忙しい週は完全に止まる。

だから、 "忘れない仕事" はAIに任せる。"何を書くか" だけ、自分が決める。


ここが、AIに任せていい領域と、人がやるべき領域の境界だと私は思っている。

AIに任せていい仕事:

  • 検知する(ニュース、誕生日、節目)

  • 思い出させる(リマインド、下書きの起点を作る)

  • 整える(議事録から要点抽出、メールの初稿)

このあたりは、AIの方が圧倒的に強い。

意志力に依存しないし、24時間動く。

体調不良で止まる私の代わりにも、動き続ける。

一方で、人が決める領域として残るのは:

  • 何を伝えるか

  • どのタイミングで踏み込むか

  • 相手の話のどこに反応するか

このあたりは、人が握っているからこそ、 "○○なら、あの人" が成立する。


加えて一つ、CROとして強く伝えたいことがある。

商談準備や資料作成だけの "部分的なAI活用" にとどめるのは、もったいない。

本来のAIの力は、組織の営業プロセス全体に染み込ませて、

お客様との接点を切らさない仕組みとして実装したときに、最大化される。

AIは、一人の営業の時間短縮ツールではない。

組織として、 "想起され続ける関係" を、量と質の両面で支える土台になる。


AIが奪うのではない。AIで空く時間で、人として向き合う

時々、「AIに営業が奪われる」という話を聞く。

私は、その立場を取らない。

60社の現場を見てきて思うのは、AIは人を不要にするものではなく、

"人が人として、営業が営業として活躍するための補完機能" だということだ。

お客様の頭の中の "想起の枠" に居続ける、という仕事は、

情報の交換、感情の機微、信頼の積み重ねでできている。

ここは、どう転んでも人にしかできない。

ただ、その手前にある、 "忘れる" "見落とす" "漏れる" という、人間の弱さの部分。

ここをAIで補ってもらえれば、人は、人らしい仕事に時間を回せる。


デジタルとアナログ。

AIとリアル。

このどちらかを選ぶ話ではない、と私は思っている。

掛け合わせたときに、人は人らしく、お客様に向き合える時間が増える。

そして "○○なら、あの人" と思い出されたとき、そこに、ちゃんと立っていられる。


冒頭の会食の話に戻る。

あのとき、私は何か特別なことをしたわけではない。

ただ、忘れずに、ことあるごとに、お互いの活動の話をしていただけだ。

そのやり取りをもう少し早くからAIに支えてもらっていたら、あの方以外にも "想起され続けたはずの関係" が、私の人生にはもっとあったのかもしれない。

そう思うと、AIに任せていい仕事は、まだまだあると感じる。


皆さんの中の "想起の枠" には、誰が入っているだろうか。

そして、誰の "想起の枠" に、自分は入れてもらえているだろうか。

私自身、まだまだうまくできてはいない。

だから今夜も、AIが教えてくれた "あの方の節目" を口実に、一通のメッセージを送ってみようと思う。

その一通が、何年か後の "紹介したい人がいる" の起点に、なるかもしれないから。

株式会社deflag CRO

岩瀬陽平

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