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なぜあなたのAIは営業で使えないのか

2026/8/5

株式会社deflag CRO

岩瀬陽平

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  • # 営業マネージャー

  • # AI

「ChatGPT、営業で使ってみたんですけどね。」
「正直、そんなに変わらなかったです。」

この半年、この会話を何度もした。

誰も間違っていない。
AIも、その人も、サボってなどいない。
ただ、「使えなかった」の正体は、少しだけズレたところにある。

私自身、AIを使い始めたひとりだ。
いまも勉強しながら、お客様の現場に伴走している。

今日はその正体を、これまで回ってきた景色から書いてみたい。

「使えない」と言われるAIは、たいてい「生成AI」で止まっている

最近、社内でAIの使い方を3つの層に分けて整理する機会があった。

  • BI……散らばったデータを、見えるようにする層

  • 生成AI……問いに答え、たたき台を出し、示唆を返す層

  • AIエージェント……決めたことを、実際の業務として動かす層

多くの人が「AIを営業に使う」と言うとき、触れているのは、まん中の「生成AI」だけなのではないかと思う。

ChatGPTにメール文面を書かせる。商談メモの要点を整理させる。

たしかに便利だ。

でもそれは、「賢い壁打ち相手」であって、「営業を代わりに動かしてくれる誰か」ではない。
壁打ちは、うまくなっても壁打ちのままだ。

BIも似ている。
数字はきれいに見えるようになる。けれど、「で、明日どこに電話するの」には、答えてくれない。

見える化が進むほど、「見えているのに動けない」もどかしさだけが増えていく、という現場も見てきた。

3つの層は、どれも要る。

ただ、営業の成果に一番近いのは、いちばん地味な「実行」の層のほうだと思う。

PwCの調査でも、日本企業は生成AIの導入こそ進む一方で、その効果が期待を下回る企業が増えていると報告されている(出典: 生成AIに関する実態調査2025春/PwC Japanグループ)。

入れたのに、効かない。

その多くは、能力の問題ではなく、「どの層で止まっているか」の問題なのではないか、と私は感じている。

AIを「賢い新人」だと思うと、なぜかうまくいかない

新しいメンバーが入ってきたとき、私たちは何をするだろう。
引き継ぎ資料を渡す。過去の商談の背景を話す。
「この会社はこういう温度感で、ここが地雷で、あの一言だけは絶対に言うな」と伝える。

ところがAIには、いきなり「いい感じの提案、作っておいて」と丸投げする。
新人になら当たり前にやる「文脈の受け渡し」を、AIには、していない。

営業の強さは、たいてい言葉になっていないところに宿っている。
前回の雑談で相手がふと漏らした本音。
決裁者と現場の力学。
「これは失注するな」という、匂いのようなもの。
その暗黙知が、どこにもデータとして残っていない。

残っていないものは、渡せない。
渡していないものを、AIは知りようがない。

野村総合研究所の調査では、生成AI活用の課題として70.3%が「リテラシーやスキル不足」を挙げたという(出典: IT活用実態調査2025/NRI(AI SMILEY 掲載))。

私はこれを、「渡し方を知らない」問題として読んでいる。
インテリジェンスで派遣営業をしていた頃、1日に5件から10件、飛び込みとテレマで回っていた。
あの頃、成果を分けたのは、商材の知識量ではなかった。
引き継ぎのときに、その人が「何を見て、何を感じていたか」まで渡せるかどうか。

人でもAIでも、たぶんそこは変わらない。

本当のボトルネックは「AIに何をさせたいか」を言えないこと

前職で、全国60社を超えるFC企業にMAツールを導入した。
多機能で、よくできた道具だった。
それでも、驚くほど形骸化する現場を、いくつも見た。

理由は、いつも似ていた。
「入れれば、なんとかなる」と思っていて、
「何を自動化したいのか」が、言葉になっていない。

AIも、同じ構造をしていると思う。
道具がどれだけ賢くなっても、「何をさせたいか」の問いが弱ければ、返ってくる答えも弱い。

ここは、あえて言い切らないでおきたい。

問いを立てるのは、思っているよりずっと難しい。私自身、日々ずれる。

ただ、少なくとも「AIが使えない」と結論づける前に、一度だけ、こう書き出してみる価値はあるのではないか。

——自分は、AIに、何を任せたかったんだっけ。

その一行が書けたとき、たぶん景色が少し変わる。

示唆で終わらせない。「実行」につないで、はじめて営業で効く

生成AIが返してくれるのは、あくまで示唆と、たたき台だ。
そこから先、実際に手足を動かすのは、別の層——エージェントの仕事になる。

たとえば、こういう景色を思い浮かべてほしい。

商談が終わる。
議事録が、勝手に出来上がっている。
必要な情報が、整理されてCRMに入っている。
次の一手のフォローメールが、下書きまで用意されている。

ここまで「実行」がつながって、ようやく「営業でAIが使えた」と言える気がする。

最近、ある支援先で、この流れを実際に回している。

商談のあと、たたき台の提案を生成AIに作らせ、そこで終わりにせず、内容をそのまま営業活動として自動でCRMに登録し、次のアクションまで残す。

派手さはない。
けれど、担当者が「議事録を書かなきゃ」「入力しなきゃ」と思っていた時間が、まるごと消えた。

消えた時間は、相手のことを考える時間に変わる。

生成AIだけを触っていた頃には、この「時間の移し替え」は、起きていなかった。
示唆と実行の間には、案外、深い谷がある。

その谷を越える設計をしないまま生成AIだけを触ると、AIはいつまでも、賢いままの壁打ち相手で止まってしまう。

「使えない」のではなく、「実行までつないでいない」。
多くの場合、順番はそちらだと思う。

それでも、最後に残るのは、人がやる仕事

ここまで自動化の話をしておいて、矛盾するようだけれど。

私はいまも、月に1回のゴルフのラウンドを起点に、1年がかりで人と人をつなぐような、ずいぶん遠回りな営業をやっている。

1,000名を超えるゴルフのコミュニティも、結局は一人ひとりの顔で回っている。

これはAIには渡せない。渡すつもりもない。
私がAIに任せたいのは、こういう時間を増やすためだ。

議事録も、入力も、下書きも、任せられるものは任せて、
空いた余白を、「あの人に会いに行く」に寄せていく。

「AIで仕事がなくなる」の、ちょうど反対側の話だと思っている。

使えないAIを嘆く時間より、AIに手放せるものを手放して、人にしかできないところへ体を運ぶ時間のほうが、たぶんずっと価値がある。

「使えない」は、裏返せば伸びしろの話

「あなたのAIは営業で使えない」——このタイトルは、少し挑発的に見えるかもしれない。

でも、責めるつもりで書いたのではない。

AIが悪いのでも、使う人が悪いのでもないと思う。

触れている層が、まん中の生成AIで止まっていて、
渡している文脈が、まだ足りていなくて、
させたいことが、まだ言葉になっていない。

それだけだ。

そして、そのどれもが、これから埋められるものだと思う。

もしこの文章を読んで、頭の中で何か動くものがあったなら——
「うちのAIは、いま、どの層で止まっているんだろう」と一度でも思えたなら、
この記事の役目は、半分は果たせた気がする。

その問いを、一緒に言葉にしてみたくなったときは、いつか一度、話してみたい。

株式会社deflag CRO

岩瀬陽平

インテリジェンス(現パーソルキャリア)で人材事業に従事後、アイセール(現クロス・オペレーショングループ)執行役員として全国110社超のMA導入・インサイドセールス立ち上げを支援。その後、株式会社Labosを創業。現在はDeflagにて、営業の「型化」と伴走型支援を軸にクライアント企業の営業変革を伴走支援している。

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