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【現地訪問レポート】レガシーシステム問題の後ろに隠れている、AI活用が進まない本当の理由

2026/9/15

株式会社deflag CRO

岩瀬陽平

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  • # AI

  • # DX・AI推進担当

先日、群馬県のある専門商社を訪問しました。

年商数十億円、取引先は約250社。資材を仕入れ、小分けや加工をして納品する中間流通を担い、市内に工場と倉庫を3拠点持ち、地域の建設を長く支えてきた会社です。

社長は電子化を早くから進めてこられた方で、「一つずつ、ちょっとずつだけど進めてきている」と話されました。コピー機に付属する電子化ソフトは、もう15年使っているとのこと。

電子化を進める動機も明確でした。
人を減らしたいのではない。現場の負担を軽くして、職場の雰囲気をよくしたいのだと、何度も口にされていました。

その上で、AI活用にはまだ着手できずにいる。

実際に訪問してお話を伺うまでは、長年使っている基幹システムの、外部との連携機能に制約があることが、AI活用が進まない大きな理由なのだろうと考えていました。

しかし、半日かけて現場の作業を画面と手元まで見せていただき、大きな問題は別にあることがわかりました。


現場を無視した電子化はDXと呼べるか

こちらの会社では、鋼材の材質を証明する書類を、仕入れ先から集め、自社で作り直し、お客様に納めるという業務がありました。

1件の案件で20〜30種類。
その1つ1つを、仕入れ先ごとに手段を変えて依頼していました。
ある会社にはメールで納品書を添えて、別の会社には専用のExcel様式をFAXで。

そして、依頼した日・返ってくる予定の日・受け取った日。
これを管理しているのは、印刷した紙への手書きメモと、担当者の記憶でした。

こういった業務の運用をしているのにも、理由がありました。

まず、仕入れ先ごとの顧客対応の癖が各担当者の頭に入っています。
この会社は返事が早い、ここは1週間かかる。だから順番を変えて先に投げておく、など。
品目によって処理を分ける必要があるところも、どうすればよいかの判断が頭に入っている。
紙に印刷して手書きで消し込むのも、一覧性が高く、あとから問い合わせが来たときに一番早く答えられるからでした。

現場を見せていただき、システムが担ってくれない部分を、人が引き受けて業務を回してきたのだろうと理解しました。
その積み重ねが、今の運用の形になっているのだと。

ちゃんと現場を見れば、DXを進めようとなった際に単に紙をなくせば済む話ではないことが分かります。
紙をなくした結果、確認に時間がかかるようでは意味がありません。

それこそ、現場の負担を軽くして職場を良くしたいという想いも、少しも反映されていない。

担当者が何を見て、どう判断しているのか。
その意図まで含めて、人が引き受けなくても回る状態を考えることがDXなのではないでしょうか。


制約に縛られているのはシステムではなく思考

この会社では、受発注管理を長年使っている基幹システムで行っていました。
注文書も見積書も請求書もそのシステムに入っています。

ただ、その基幹システムは外部からのアクセスを認めていませんでした。
システムを納入したベンダーの方針とのことで、安定稼働に責任を負う立場としての判断だと思います。

できることで言うと、担当者が画面を操作してExcelに書き出すことでした。

私が訪問する前日にも、そのシステム会社の担当者が来社されていたそうです。
そして、「Excelの抽出をワンクリックでできるようにしましょう。」と。

抽出の手間が減る。それは確かに改善です。

ただ、現場の作業を最後まで追うと、負担がかかっているのはその先の運用。
並べ替え、整形、印刷、仕入れ先ごとの依頼。

返ってきた書類を確認して、紙に消し込む作業もある。

抽出が速くなったとしても、担当者の手元には多くの仕事が残っています。

そういった提案を受けた、という話を聞く中で私が最も気になったのは、その一連の作業手順を前提にして話が進んでいたことです。

今ある操作を便利にする余地はある。
でも、この作業を最初から最後まで同じ形で残す必要はあるのでしょうか。

「それが一番DXじゃないですか」

そこで、私は別のやり方を話してみました。

基幹システムのトップ画面に「証明書の作成依頼」というボタンを1つ置く。
検索も整形も送付も、その裏でまとめて処理する。
担当者が順番に操作している部分を、まとめて済ませられないかという案です。

もちろん、実現にはベンダーとの調整や技術的な確認が必要になります。
まずは、目指す業務の形として話しました。

その時、私が話し終わらないうちに担当者の方が言いました。
「それが一番DXじゃないですか」と。

この方は、進捗の全体像を1人で持っている方でした。
どの物件のどの材料をいつ依頼して、まだ返ってきていないのはどれか。
紙のメモと記憶を組み合わせて、毎日の業務を回しています。

自分の仕事のどこに時間がかかっているかをよく理解している。
だからこその反応だったのだと思います。

現場に、変えたいことがなかったわけではありません。
ただ、それを外部に依頼できる形にするところまでたどり着けていなかったのです。

「こうなると助かる」と、「こういう機能を作ってください」の間には距離があります。
業務を整理し、必要な機能を考え、費用と効果を並べて社内で説明する。
そこまでできてようやく、ベンダーとの開発の相談になる。

日々の業務を回している方に、それを全部求めるのは難しいと思います。
業務に詳しいことと、改善の企画をまとめられることは、別ですから。

やりたいことの背景に、本当のDXが隠れている

こうした話をすると、「そこまでやるのはシステム会社の仕事ではない」という意見もあると思います。

契約や責任の範囲を考えれば、その通りです。
依頼された機能を作り、正しく動く状態を維持する。業務全体の見直しまで、契約に含まれているとは限りません。

ただ、依頼する側が何を頼めばいいか分からない状態なら、誰かがその手前に入る必要があります。

「Excelの抽出を速くしたい」という要望を受ければ、抽出を速くする方法を考えることになります。
でも、その要望が出てきた背景には、書類を集める一連の仕事があり、その一連の中で早くできる箇所を探した結果が、抽出の手間だったという流れがあります。
その背景を見ないままでは、根本的な改善には至れません。

私は、要望を聞いた上で、実際の作業も見せていただきたいと思っています。
画面を切り替える。紙を探す。別のファイルを開く。そうした動きの中に、打ち合わせでは出てこない手間があるからです。

そしてそれこそがやりたいことの背景であり、本当に改善すべき問題だったりします。


DXでよくある「データ”は”ある」の問題

今回、作業を見せていただく中で、業務の流れ以外にも気になる点がありました。データの扱いです。

1つは、仕入れ先から届く納品書。

どこに保管されているかを尋ねると、「基幹システムにも、文書管理にも入っていません」という答えでした。
紙のまま社内に保管されている。
証明書を依頼するたびに、その納品書を探してスキャンし、添付する必要がありました。

電子化を進めたいという意思は、社長にも現場にもあります。
ただ、日々の業務で使う書類のうち、どこまでがデータになっていて、何が紙で残っているかは、整理しきれていない状態でした。

この状態なら、まず納品書を探さずに取り出せるようにするだけでも、負担を減らせる可能性があります。

もう1つは、Excelの列の使い方。

仕入れ先の名前が入る列に、特定の品目のときだけ、長さの数値が入力されていました。
「これはコラム材だから、ここは長さを入れる箇所だ。」と担当者は文脈で読み分けられます。
現場の運用では、それでも問題はなかったのだと思います。

ただ、自動処理につなげるなら、その判断のルールを明らかにする必要があります。
列を分けるのか、品目に応じて処理を変えるのか。担当者が分かっていることを、仕組みの側でも扱えるようにしなければなりません。

「Excelで管理しています」と聞くだけでは、ここまでは分かりません。
ファイルを開いて、入力されている内容を見て、担当者に聞いて初めて分かります。

業務を言語化するというのは、こうしたことでもあります。
何を探しているのか。どこで判断が入るのか。例外はあるのか。
一つずつ確かめて、担当者以外の人にも分かる状態にする。

地道ですが、ここが曖昧なままでは、現在の業務を整理することも、その先のDXを進めることもできません。

システムを新しくするだけでは、DXは進まない

仮に明日、この会社で使っている基幹システムが外部アクセスを許可したとします。

できることは増えるでしょう。
ただ、システムが開かれたからと言って、この会社の業務が改善・自動化されるとは思えませんでした。

紙の納品書をどう扱うか、Excelの列をどう整理するか、どこまで自動で処理し、どこを人が確認するか。
整ったのはあくまで環境だけで、DXを進めるには、そもそも整理すべき事柄が多くあります。

確かに、システムの制約はありました。
けれど、その制約が解消されればDXが進む状態ではなかったのです。

そしてこれは、この会社に限った話ではないと思います。

新しい業務システムを入れていても、生成AIを契約しても、自社のどの仕事にどう使うかが決まっていなければ、活用は進みません。
「導入したのに使われない」というときも、機能が足りないのか、業務とのつなぎ方が決まっていないのか、きちんと確認しなければ解決できない。

その確認には、やはり現場を見るのが早い。
今回も、話だけではつかめなかったことが、実際の作業を見ることで具体的になりました。


本当のDXを進めるために

では、現場の仕事を変えるDXはどう進めればよいのでしょうか。
今回のような業務なら、次の順番で考えたいと思います。

①業務の全体像を把握する
まずは社内の担当者に、書類の依頼から受け取りまでの作業を見せてもらいます。
なぜ紙に書くのか、どこで判断が入るのか。業務を知る人が説明し、整理を担う人が質問して、普段は意識していない手順や例外まで確かめます。

②改善後の仕事の形を決める
次に、残すべき作業と減らせる作業を整理します。理想の業務プロセスの設計です。
今回なら、Excelの抽出後に続く整形や送付までまとめて済ませられないかを考える。
改善案を作る人と現場の担当者で検討し、目的や優先順位を決めます。

③開発できる要件に落とし込む
目指す仕事の形が決まったら、使うデータや必要な処理、人が確認する箇所を要件に落とします。
既存システムの制約や、実現するための最適な方法を決めていく役割です。
業務の知識と技術の知識の両方が必要になります。

④仕組みを作り、現場で確かめる
実装を担う人が必要な処理を作り、社内の担当者が実際の業務で使って確かめます。
手間が減ったか、確認しづらくなった箇所はないかを見て修正し、日々の運用の中でよりよい業務プロセスになるように改善を続けます。

⑤全体の責任を持つ
そして、全体の計画や進捗を管理し、決めるべきことを関係者に確認する役割も必要です。
予定通りプロジェクトが進んでいるか、問題が発生していないか、本来の目的と進行しているプロジェクトに乖離が発生していないかを日々注視します。

伴走者が見つからないときは

ただ、こうした役割を社内ですべて担うのは難しいこともあります。
新たに採用するにも時間がかかります。

業務を説明できる人はいても、改善案や開発する内容をまとめる人がいない。
そうした場合は、不足する役割を外部の伴走者と分担する方法があります。

社内で任せる人が見つからない、何を頼めばよいか整理できていない。
そんなときは、一度Deflagに相談してみてください。

今回の訪問のように、実際の業務を見ながら、どこを変えれば負担を減らせるのか、一緒に考えたいと思っています。

最初から要件をきれいにまとめていただく必要はありません。
まずは、日々の業務で何に困っているかを聞かせていただければと思います。


最後に

「うちのシステムは開けてくれないから」

AI活用の話をしていると、この言葉を聞くことがあります。
実際に制約はありますし、現場だけでは変えられない事情もあるでしょう。

ただ、今回の会社では、Excelに書き出すことはできていました。
メールで届く書類もある。紙の書類も、保管や電子化の方法を見直す余地があります。
基幹システムに直接つながらなくても、検討を始められる部分はありました。

半日の訪問ですから、すべてを把握できたわけではありません。
具体的に進めれば、さらに確認すべきことは出てきます。

それでも、社長が目指している方向と、現場が変えたい仕事は見えてきました。
必要なのは、それを実行できる形にしていくことです。

「それが一番DXじゃないですか」

あの言葉が、今回の訪問では強く残っています。
現場には、提案を受け止めて判断できるだけの経験がある。
こちらが業務を理解し、具体的な案を出せば、話は進む。

要件がまとまるのを待つだけでなく、その前から一緒に考える。
提案する側として、そこは担っていきたいと改めて思いました。

株式会社deflag CRO

岩瀬陽平

インテリジェンス(現パーソルキャリア)で人材事業に従事後、アイセール(現クロス・オペレーショングループ)執行役員として全国110社超のMA導入・インサイドセールス立ち上げを支援。その後、株式会社Labosを創業。現在はDeflagにて、営業の「型化」と伴走型支援を軸にクライアント企業の営業変革を伴走支援している。

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