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コラム

AIで連絡数を増やすだけでは成約は増えない|重要なのは具体的な求人情報が保存されているか

2026/10/26

株式会社deflag COO / CDO

深川 泰雅

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多くの業界でAIの導入が進む中で、人材紹介業界でもAIが浸透し始めています。

キャリアアドバイザーが、推薦文や職務経歴書の作成、面談記録の整理に、生成AIを使うようになってきました。

Deflagにもこの数ヶ月、人材紹介会社や派遣会社から、AIの活用についてのご相談が増えています。

ご相談いただいた会社から、AI化したいポイントとして挙がるのが、書類作成の自動化や、営業時間外・土日に応募した求職者や、過去に登録したものの連絡できていない求職者に、AIで自動に連絡し面談の数を増やして決定を増やすという案です。

ところが、話を聞いた範囲では、連絡量を増やして決定が増えたという話はなく、反応があったと聞いたのは、個々の求職者に合う具体的な求人を示して連絡した場合でした。

この記事では、人材紹介の業界でAIの活用がどう進んでいるかと、ご相談いただいた会社の状況をまとめ、人材紹介会社がAIに何を担わせるべきかを考えます。

AIを入れると、まず連絡を増やしたくなる

担当者の対応が追いついていない求職者がいる事自体は、話を聞いた複数の会社で確認できました。

ある人材紹介・派遣会社(以下、A社)では、過去に登録した人、営業時間外の応募、土日の応募について、現場が対応しきれていないと聞きました。

総合人材サービスのB社では、担当者が夕方に帰った後に入った応募は翌日の午前10時まで、日曜の夜に入った応募は月曜まで、応募者の情報をデータベースに登録する作業すら始まらない状態でした。

人材紹介のC社では、求人管理システムに登録した候補者が千人以上いるものの、その人たちへのアプローチはほぼできておらず、最初の面談をして終わりになっていると話していました。

大手も同じ見立てを持っています。

パーソルホールディングスは、カウンセリング(キャリアアドバイザーとの面談)を実施できていない求職者を「取りこぼしていた層」と呼び、24時間365日対応できるAIのサポートを広げて、その層からの上積みを狙うと説明しています。
(出典:パーソルホールディングス スモールミーティング質疑応答、2026年3月)

こうした状況を見ると、AIに連絡を任せて面談の数を増やすという発想になるのは、自然な事だと思います。

連絡を増やした会社で起きた事

A社は、過去の登録者に自動で電話をかける仕組みを使っていますが、担当者は「結果がまったく出ていない」と話していました。

決まった順番で自動送信するメールも試し、反応した求職者に別のメールを続けて送る運用まで検討していましたが、反応がほとんどなく、その運用を設計するだけの成果は見込めないと判断していました。

過去の登録者への自動の電話は、まったく結果が出ていない。
順番に送る自動メールも、ほとんど反応がなかった。
(A社 担当者の発言要旨)

人材紹介のD社は、キャリアアドバイザーの活動量を思い切って増やしましたが、増やした分だけ決定にはつながらず、課題はマッチングにあると話していました。

同じく人材紹介のE社も、候補者のデータベースへの再アプローチはこの数年いろいろな方法を試してきており、方法を変えても、実際に行っている事は同じではないかと見ていました。

業界全体の数字では、日本人材紹介事業協会の会員78社の2025年度の実績で、前年度と比べて求人数は25.2%、求職の申込は26.5%増えた一方で、就職の件数は0.3%の増加にとどまっています(出典:日本人材紹介事業協会 業況調査、2026年)。

この数字だけで原因は言えませんが、求人数と求職の申込件数が増えても、就職件数が同じ割合で増えるわけではない事は分かります。

求職者の反応があったのは、具体的な求人を示した連絡だった

同じA社で反応が良かったのは、個々の求職者に合う具体的な求人を示して、個人に宛てて送ったメールでした。

開封される率も、実際に仕事に就く率も高く、今後はこのメールを増やしたいと話していました。

大手人材紹介会社のF社では、以前はキャリアアドバイザーが登録者にひたすら電話をかけて転職の意向を聞いていましたが、2026年4月から、面談を予約した登録者だけをキャリアアドバイザーに引き継ぎ、面談の時間を優先して確保する運用に変えました。

面談の数は減りましたが、率は上がったそうです。

なお、予約しなかった登録者をその後どう扱っているかまでは聞けていません。

F社の担当者は、求職者は他社のサービスにも登録しているため、初回の面談でどれだけ幅広く、質の高い求人を紹介できるかで成約率が変わると話しており、管理職として一番時間をかけるべきなのは、内定が出る求人を揃え、その情報を最新に保つ事だとも話していました。

初回の面談で、どれだけ幅広く質の高い紹介ができるかで成約率が変わる。
だから一番時間をかけるべきなのは、内定が出る求人を揃え、情報を最新に保つ事だ。
(F社 管理職の発言要旨)

求職者は求人の詳細情報を、企業は条件に合う求職者を求めている

この記事で言う求人の詳細情報とは、労働条件の詳しい内容と、企業が本当に求める人物像のような、求人票に書かれていない企業の情報を指します。

公的な調査も、話を聞いた会社と同じ方向を示しています。

厚生労働省が委託した「採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査」(2021年度、求職者2,560人、企業561社)では、求職者が人材紹介会社に求める事の多くは「労働条件など求人の内容を詳しく教えてほしい」で29.3%であり、「できるだけ早く紹介先を紹介してほしい」は14.5%でした。

人材紹介会社を使う理由も、「求人企業の詳しい情報を知ることができる」が45.4%で、「就職が決まるのが早い」は6.5%にとどまり、企業が人材紹介会社に求める事も、「条件に合った求職者」の37.4%に対して、「早く」は18.9%、「多く」は10.9%でした。

紹介事業者に、業績が上位の担当者の優れている点を聞いた調査もあります。

全国民営職業紹介事業協会が厚生労働省の委託で行った調査(2025年3月、紹介事業者401社)で、業績が上位20%の担当者が平均的な担当者より優れている点を聞いたところ、最も多かったのは「求職者と求人企業のマッチング力」の37.9%であり、「素早い対応」は34.2%、「同時に担当できる求職者数」は15.7%でした。

求人企業への対応に限ると、「求人条件を良く理解している」が44.0%、「求人条件の明確化や条件の拡大をはかる」が39.9%と続きます。

どちらも、何を求めるか、何が優れているかを聞いたアンケートであり、運用を変えたときの効果を測ったものではありません。

それでも、求職者は速さより求人の詳しい情報を求め、企業は速さや人数より条件に合う求職者を求めており、業績上位の担当者の強みとして挙がるのも、同時に担当できる人数よりマッチング力と求人条件の理解である事は読み取れると思います。

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求人の詳細情報は、求人管理システムには大体入っていない

ところが、話を聞いた会社では、この情報が求人管理システムに入っていない例がありました。

A社では、求人管理システムに求人条件の詳しい内容が入っておらず、現場の営業担当に、求職者からの細かな質問への回答まで含めて記録してもらうのも難しいため、承諾を得る事が課題になっていました。

人材紹介のG社も、現場は条件の良い求人で応募の承諾を取りがちで、その求職者が実際に決定まで進む求人なのかという見立てが甘くなる事は、自社でも起きていると話していました。

求職者と求人が合うかを判断するうえで、求人票に書かれていない情報が欠かせない事は、公表内容にも表れています。

ジェイ エイ シー リクルートメントは、ミドル・ハイクラスの紹介では、企業カルチャーや将来の戦略、候補者の実績や人柄といった、求人票や職務経歴書に書かれていない要素を踏まえる事が求められ、企業が本来求める人材が求人票の要件と違う事も多いため、求人票自体を直しながら採用を進めていると説明しています。
(出典:ジェイ エイ シー リクルートメント 生成AIの影響に関する株主・投資家向けの説明、2026年)

ビジョナルも、マッチングの機会を速さを保ちながら最大にするには、質の高いレジュメと求人データが欠かせないとしています。
(出典:ビジョナル FY2026/7 3Q 決算説明資料、2026年6月)

求人の詳細情報を使わずにAIに求人を勧めさせると、どうなるかを示す例もあります。

ハローワークで職員向けに行われたAIの実証では、AIが求職者に勧めた求人の約7割を、職員が「妥当ではない」と評価し、その理由の37%は職種・仕事のミスマッチでした。

このAIが学習していたのは数字5桁の職業分類コードなどであり、改善策として、「職種名」や「仕事の内容」欄の文章を学習データに加える事が挙げられています。
(出典:厚生労働省 職業安定分科会 第225回 資料2、2026年6月)

大手は、カウンセリングの実施率と登録決定率の両方を上げる計画を立てている

連絡の量を増やす計画を出している大手も、量だけを増やそうとしているわけではありません。

パーソルホールディングスは、AIによるカウンセリングで、これまで支援できなかった層にもアプローチし、カウンセリングの実施率を1.2倍にする計画と同時に、独自のデータを使ったマッチングで登録決定率を1.3倍にする計画を示しており、志向性や企業文化といったデータも使って、「母数と決定率の両方を伸ばす」と説明しています。
(出典:パーソルホールディングス IR DAY 2026、2026年7月)

同社は、決定率を最も重要な指標として管理していくとも述べています。

AIに担わせるのは、連絡の回数ではない

私たちが確認した範囲では、国内の事例で連絡の頻度や示す求人の情報を変えて、決定の増減を測った調査は見当たりませんでした。

そのため、効果が証明されたとは言えませんが、話を聞いた会社の結果も、公表内容も、公的な調査も、連絡の量より、連絡で示す求人の詳細情報が決定を左右するという方向を示していると思います。

連絡の量を増やすだけでは決定は増えにくく、決定につながるのは、連絡のたびに、その人に合う求人の詳細情報を示せた場合だと考えています。

キャリアアドバイザーが本当に知りたいのは、この候補者にはどの求人を提案したら一番決まるのか、という事だと私は思っています。

その答えを出すために、求人票に書かれた条件に加えて求人管理システムに残しておくべき情報は、話を聞いた会社の例から、次のようなものだと考えています。

  • 募集の背景と緊急度、採用予定の人数:
    営業担当が企業と直近にやり取りした内容であり、F社でも、対応の履歴を見ただけでは分からない事があると話していました。

  • 企業が実際に求めている人物像と、求人票の要件との違い:
    どの要件は譲れず、どの要件なら緩められるかまで残します。
    B社では、キャリアアドバイザーは企業との商談に同席しておらず、手掛かりが求人票しかないため、営業担当から見て的外れな推薦が続く事があると聞きました。

  • 過去の選考の記録:
    その企業に推薦した人のうち、どんな人が通り、どんな理由で見送られたかであり、F社では面接対策をこの記録をもとに行っています。

  • 求職者から聞かれる細かな質問への回答:
    求人票には書かれていない条件の詳しい内容であり、A社では、ここが記録されていない事が承諾を得るうえでの課題になっていました。

  • 企業の文化と今後の戦略:
    ジェイ エイ シー リクルートメントが、求人票に書かれていない要素として挙げていた情報です。

求職者側についても、F社の担当者は、成果を出すキャリアアドバイザーほど、表面的な希望条件だけでなく、求職者の本音や優先順位、譲れる条件まで聞き出していると話していました。

これらが求人管理システムに残っていれば、AIは連絡のたびに、求職者の譲れない条件と企業の譲れない要件の両方を満たす求人を選び、その求人を勧める理由と一緒に示せるようになると思います。

推薦文や面談記録の作成でAIが空けた時間を、連絡の回数を増やす事に使う前に、まずこうした情報を残す運用を作る事が、決定を増やすための順番だと思います。

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システムに残すべき情報を105項目のデータシートにまとめました

では、これまでの章で挙げた情報を、求人管理システムのどの項目に、どんな形で残せばよいでしょうか。
私たちは、求人の詳細情報を含め、マッチングに必要なデータをExcelシートにまとめました。

企業、求人、求職者、選考など10の単位ごとに、何を溜めるべきかと優先度を整理し、PORTERS・Salesforce・HubSpot・kintoneの4つのシステムにおける標準項目も比較しています。

各項目の溜め方と、記録したデータを求人の提案にどう使うかは、人材紹介のマッチング精度を上げるためのデータベース設計を公開で詳しく書いています。

記事では、マッチング精度にフォーカスをあて、求職者の「応募したいか」と企業の「選考に通るか」の2軸でデータを分類しています。

各項目のデータの溜め方からデータの活用法まで整理していますので、併せてご一読ください。

【記事で紹介している活用例】

  • 見送り・辞退の理由から、希望条件の優先順位を見直す

  • 不合格理由を企業ごとに並べ、企業情報を更新する

  • 似た経歴の求職者への提案結果を確かめる

  • 提案の結果をもとに、AIによる求人の選び方を見直す

お気軽にご相談ください

私たちDeflagは、人材紹介会社の業務とデータを整理し、求人管理システムに何を蓄積するかの設計から、AIの実装、導入後の効果の確認までを支援しています。

連絡の自動化を検討している段階でも、決定につながる情報のうち、どれが今のシステムに入っていないかを確かめるところから、ぜひ一度ご相談ください。

    株式会社deflag COO / CDO

    深川 泰雅

    大阪大学卒。人材紹介事業の法人営業を経て、BtoB SaaS企業でマーケティング・グロースハックを担当し全社通期MVPを獲得。その後データ部門責任者としてDWH構築から事業管理までを推進。現在はDeflagにて新規事業構築・事業管理・データマネジメント支援を指揮している。

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