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AIで作れるとは。「動く」と「使える」の大きな差

2026/8/2

株式会社deflag CRO

岩瀬陽平

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  • # MCP活用

  • # データ基盤

DeflagでCROをしている岩瀬です。

先日、あるお客様との打ち合わせで、こう聞かれた。

「AIでデータ基盤って、もう作れるんですよね?」

聞けば、APIやMCPでいろんなツールをつないでしまえば、散らばったデータをAIが勝手に整理して、名寄せして、統合してくれる。設計や要件定義だって、AIに任せられる。そういう話をどこかで聞いたのだと言う。

私はその場で、少しだけ言葉を濁した。

「……一定は、できると思います。ただ」

この「ただ」の続きを、その打ち合わせではうまく言い切れなかった。
帰り道でずっと、あの濁りの正体は何だったんだろう、と考えていた。

今日は、その濁りを言葉にしてみたいと思う。

まず認めたい。AIは「作る作業」を、確かにやれる

最初に、お客様の言っていたことを頭ごなしに否定はしない。

むしろ、かなりの部分は本当だと思っている。

APIやMCPを前提にすれば、あちこちのツールに散らばったデータをAIがつなぎにいく。
列の意味を推測して名寄せの候補を出す。テーブルの設計案や、要件定義のたたき台を書く。
こういう「作業」は、実際にAIがやれるようになってきた。

数年前なら、専門のエンジニアが何週間もかけていたことが、指示ひとつで下書きまで出てくる。これは素直にすごいことだと思う。「AIでデータ基盤を作れる」という言葉は、この部分だけを見れば、確かに嘘ではない。

だから私は「できない」とは言わなかった。

言えなかったのは、その先だ。

でも、現場で見た景色は少し違った

実際に手を動かした現場で、私が何度か見た景色がある。

一言でいうと、こうだ。

動きは、確かだった。でも、アウトプットが正しくなかった。

処理はきれいに走る。エラーも出ない。AIはちゃんと指示通りに、データをつないで、整形して、それらしい結果を返してくる。画面の上では、何も問題が起きていないように見える。

ところが、出てきた中身をよく見ると、業務的に意味がずれている。
つなぎ方は合っているのに、つないだ結果が「現場の実態」とは違うものになっている。

具体を少しぼかして言うと、こういうことが起きる。

ある会社の情報が、片方の台帳では正式名称で、もう片方では略称や旧社名で入っている。
人間なら「これ、同じ会社だよね」と一目で分かる。
でもAIは、表記が違えば別のものとして扱うか、
逆に似ているというだけで本来別の会社を一つにまとめてしまう。
処理としては何も間違っていない。指示通りに、忠実に、名寄せをしている。
ただ、その結果が現場の実感と食い違う。

厄介なのは、これが「壊れた形」では出てこないことだ。
エラーで止まってくれれば、まだ気づける。
でもAIのアウトプットは、たいてい「それらしく整った形」で出てくる。
整っているから、正しいように見えてしまう。よく見ないと、ずれに気づけない。

「動く」と「正しい」は、違う。
そして、正しくないものは、結局のところ現場では「使えない」。

ここが、あの日私が濁した「ただ」の正体だった。AIがやってくれるのは「動かすこと」であって、「正しいこと」を保証してくれるわけではない。
動いたからといって、正しいとは限らない。
むしろ、きれいに動いてしまうぶん、ずれていることに気づきにくい。
そして、正しくないデータの上でどれだけAIを動かしても、その示唆は業務で使えるものにならない。

技術的に動くかどうかと、業務的に正しく使えるかどうかは、別のレイヤーの話なのだと思う。

話が噛み合わない理由は、二つの話が混ざっているから

なぜこの手の会話は噛み合いにくいのか。

自分の中で整理していくと、「AIでデータ基盤を作れる」という一言に、
本当は二つの別々の話が混ざっているからだ、と気づいた。

一つは、実装の話
つなぐ、整理する、名寄せする、設計の下書きをする——いわば「作る作業」の話だ。

もう一つは、データの話
出来上がった基盤の中身が、業務として「正しいか」どうかの話だ。

この二つを分けずに一緒くたにするから、「できる」「いや難しい」がすれ違う。
分けてみると、立ち位置はわりとはっきりする。

  • 実装の話(作る作業)は、AIで一定「動く」。ここは、これからどんどん進む。

  • データの話(中身の正しさ)は、動くこととは別問題で、今のところ人の確認が外せない。

お客様が見ていたのは前者で、私が濁ったのは後者だった。
同じ「データ基盤」という言葉を使いながら、指しているレイヤーが違っていたわけだ。

この二つがなぜ混ざりやすいかというと、前者の進歩が目に見えて速いからだと思う。
作る作業がどんどん自動化されていくのを見ていると、「じゃあ中身の正しさも、そのうちAIが担保してくれるだろう」と地続きに考えたくなる。
でも、私の実感では、この二つは地続きではなく、別々の階段だった。
作る作業の階段を何段のぼっても、中身を正しくする階段が自動でのぼれるわけではない。

中身の「正しさ」に、何が要るのか

では、後者——中身の正しさには、具体的に何が要るのか。

ここは私の個人的な思いつきではなく、Deflagとして整理している見解とも重なる。少しだけ、その中身を紹介したい。

AIがデータを使って「正しく」示唆を出すためには、データを一箇所に集めるだけでは足りない。少なくとも、次の三つが要る。

一つ目は、整備されたデータそのもの
品質と鮮度が担保されていて、信頼して参照できる状態になっていること。ゴミが混じったまま統合しても、AIはそのゴミごと、それらしく処理してしまう。

二つ目は、コンテキスト
業務用語や指標の定義だ。社内の資料では、こんな言い方をしている——「AIの分析は嘘をつく」。たとえば「売上を分析して」と頼んでも、AIはそれを商談実績から数えればいいのか、支払い履歴から数えればいいのか、自分では判断できない。人間なら暗黙に共有している「うちの言葉の意味」を渡しておかないと、動いても正しくならない。

三つ目は、ガードレール。どのデータをAIに読ませてよくて、どこから先は読ませてはいけないのか。参照範囲や権限をどう制御するのか。これを支えるのがガバナンスとセキュリティの考え方で、外せない。

このあたりが、あの日私が言いかけて飲み込んだ「ただ」の中身だった。整備されたデータ、うちの言葉の定義、そして読ませてよい範囲の線引き。この三つは、少なくとも今は、人が関わって確かめる工程が要る。

だから私は「AIで作れますよ」とは言い切れなかったし、逆に「まだ無理です」とも言いたくなかった。作る作業は進む。でも、中身を正しくする工程は、まだ人の手が要る。そういう、少しだけ歯切れの悪い立ち位置なのだと思う。

とはいえ、線は動いていく

ここまで書いておいて、最後にひっくり返すようだが。

「人の確認が要る」と言い切ってしまうのも、私は少し違うと感じている。

というのも、何がどこまでAIに任せられて、どこからが人の仕事として残るのか——その線は、正直なところ、試してみないと分からないからだ。
去年できなかったことが、今年は普通にできている。そういう場面を、この一年でいくつも見てきた。

だから私が持っていたい構えは、二つを同時に、というものだ。

懐疑と、実験を、同時に持つ。

「AIで全部できる」と決めつけて丸投げもしないし、「どうせ人がやるしかない」と決めつけて試すことをやめもしない。できると決めつけず、できないとも決めつけず、その線を自分の手で確かめにいく。小さく試して、動いた結果が正しいかを人の目で見て、任せられる範囲を少しずつ広げていく。

具体的には、いきなり全社のデータで壮大な基盤を組もうとしないことだと思う。
まずは一つの業務、一つのデータの塊で試す。
AIにつながせて、整えさせて、出てきたものを人が見る。
そこで「動いたけど、ここは正しくなかった」というズレを一つずつ拾っていく。そのズレこそが、自社にとって「どこに人の確認を挟むべきか」を教えてくれる地図になる。
最初から完璧な線を引こうとするより、ズレを拾いながら線を描いていくほうが、結局は早い。

この進め方は地味だ。一気に自動化される華やかさはない。
でも、動いてしまうものを疑いながら、任せられる範囲を実測していく
——この地道さが、いまAIとデータを扱ううえでいちばん効くのだと感じている。

矛盾しているようだが、この矛盾を抱えたまま進むのが、今のいちばん現実的な構えなのだと思う。

おわりに

あの打ち合わせで私が濁した「ただ」を、ここまでで少しは言葉にできた気がする。

AIでデータ基盤は作れる。でも、「動く」と「使える」は違う。
作る作業は任せられても、中身を正しくして「使える」状態にする工程には、まだ人の確認が要る。そしてその線は、試しながら動いていく。

たぶん、この記事を読んで一番リアルに響くのは、実際に自社のデータと格闘している方だと思う。そういう方の頭の中では、きっと今、こんな問いが動き始めているのではないだろうか。

——なるほど。で、うちの場合、どこに人の確認を挟めばいいんだろう。

その問いが浮かんだなら、この記事はちゃんと役目を果たせたのだと思う。
答えは、会社ごとに、データごとに違う。
だからここで一般解を書くよりも、その問いを持って現場のデータを見に行くほうが、きっと早い。

もし、その線引きを一緒に考えてみたいと思う場面があれば、いつか一度、お話ししてみたい。

株式会社deflag CRO

岩瀬陽平

インテリジェンス(現パーソルキャリア)で人材事業に従事後、アイセール(現クロス・オペレーショングループ)執行役員として全国110社超のMA導入・インサイドセールス立ち上げを支援。その後、株式会社Labosを創業。現在はDeflagにて、営業の「型化」と伴走型支援を軸にクライアント企業の営業変革を伴走支援している。

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