
# AI開発
# AI
# データ基盤
「あの案件、結局どうなってたんだっけ」
会社が動いていると、この一言が一日に何度も出ます。
答えは、どこかにあります。Driveの中のどこかのフォルダ、Notionのどこかのページ、Slackの去年のスレッド、顧客管理の記録。あるのに、たどり着けない。
探しているうちに、何を探していたかを忘れる。
これは、その「探す時間」を消すために、会社の情報をまるごとAIが読める形に作り替えた話です。ただ、やってみて一番大事だと分かったのは、技術の話ではありませんでした。
うちの会社の情報は、だいたい4つの場所に存在しております。
Google Drive、Notion、Slack、顧客管理。
1つを見ても、全体は見えません。
提案の経緯はNotionに、決めた背景はSlackに、金額や連絡先は顧客管理に、資料はDriveに。
人間が頭の中でつなぎ直して、はじめて「あの案件」の全体になります。このつなぎ直しを、毎回やっている。
そこで、4つをまとめて1つの箱に束ねました。
「あの会社の提案状況は?」と聞くと、4つの情報源を横断して、どのファイルが根拠かのリンク付きで答えてくれる。探すのではなく、聞けば返ってくる状態です。
やっていることは、そんなに複雑ではありません。
情報を3つの層で積んでいるだけです。
1つめは、原本の層。
4つの情報源をそのまま置きます。一切書き換えません。
2つめは、ラベルの層。
1つのファイルにつき1枚、AI用の「ラベル」を作ります。
何が書いてあるかの要約、どの顧客のどの案件か、今どのフェーズか、どれくらい機密か。中身が薄いファイルでも、空欄にはしません。ここの質が、あとの全部を決めます。
3つめが、知識の層。
ラベルを束ねて、横断の知識にします。案件ごとの決定の時系列、受注できた提案の共通点、案件ごとの「課題・やったこと・結果・学び」。
大事なのは、元のファイルには一切触っていないことです。
散らかったものを片づけたのではなく、AI用の地図を別に一枚、上から重ねただけ。片づけようとすると、いつまでも終わりません。触らずに地図だけ足す。
毎朝決まった時間に自動でこのラベルを更新しています。
前の日に動いた分だけを取り込み直す。全部を読み直さず、変わったところだけ。
金額や個人の連絡先は、取り込む前に伏せる。1つの情報源が止まっても、他は止まらないようにしてあります。
私がやるのは、朝それに目を通すことだけです。
最初に効いたのは、探す時間が消えたことでした。
「過去に似た提案、なかったっけ」が、探す前に出てくる。
「この件、前にどう決めたか」が、根拠のリンク付きで返ってくる。数週間後に同じ議論をもう一度やる、あの蒸し返しがなくなる。
ここまでは、高性能な検索AIです。おもしろかったのは、その先でした…!
決定の記録や、勝ってきた提案の型や、案件ごとの学びまで束ねたところ、AIの返してくるものが変わりました。
一番効いたのは、新しく提案をつくるときです。
新しい提案先に「こういう提案をしたい」と投げると、過去の似た案件と、これまで勝ってきた提案の型と、参考になる資料を並べて、提案の骨子と仮説まで出してくれる。
ゼロから考えるのではなく、うちがこれまで勝ってきた型の上から考え始められる。
これが有効なのは提案づくりの一番重い部分が「白紙を埋めること」だからです。
白紙から埋める作業が、たたき台がある状態からの作業に変わる。
この差はかなり大きいです。空っぽの資料を前に固まる時間が、ほとんどなくなりました。
返ってくるのが、どこかで読んだような一般論の「AIっぽい答え」ではなく、「うちならこう考える」に近いものになる。
自社の決めてきたこと、勝ってきたやり方を材料に渡しているからです。ただ速く探せるだけの検索と、決定的に違うのはここでした。
ここまで書くと、情報さえ集めればAIが勝手に賢く考えてくれる、と読めるかもしれません。でも全然そんなことはありません。
この土台は、ビジネスと構造を分かっている人がいないと、そもそも組み立てられません。
何を具体的に「ラベル」に書くか。どの単位で案件をまとめるか。何を「勝ちパターン」と呼ぶか。そして、目の前の新しい相手に対して、何を問うべきか。
ここを決めているのは、すべて人間です。
実際、最初のうちは、うまくいきませんでした。
ラベルの付け方が雑で、案件のまとめ方も的を外していて、返ってくる答えは当たり障りのないものばかり。
まさに、どこかで読んだような一般論でした。何が「勝ち」で、どの単位で見れば意味のあるまとまりになるのか。それを言葉にできてはじめて、AIの答えが「うちらしく」なっていきました。
ここは、事業を分かっていないと、そもそも言葉にできません。
AIは、与えた型の上ではよく考えます。
でも、その型を作るのも、新しい相手に合わせて型を問い直すのも、人間の仕事でした。問いが甘いと、返ってくる考察も甘くなる。整った土台の上でも、いい問いを立てられなければ、ただ速いだけの平凡な答えにしかなりません。
一番難しくて一番時間をかけたのは、技術ではなく、「問いと構造の設計」のほうでした。
たどり着いた結論はこうです。
AIが賢くなるほど価値が上がるのは、ビジネスと構造を理解して、いい問いを立てられる人です。
材料を集めて、型の上で考察の下書きを出すところまでは、AIがやってくれるようになりました。
でも、何を問い、どう構造にして、最後にどう判断するか。そこは人間の仕事として残ります。
前に、集めて気づくのはAI、決めて動くのは自分だと書きました。
今回それに一つ足すなら、問いを立てて型を設計するのも、人間の仕事だということです。
もし自社で同じことをやってみたいなら、順番はツールが先ではありません。
まず、会社のことと構造を分かっていて、いい問いを立てられる人を、中心に置くこと。その人がいれば、土台は小さく始められます。
逆にそこが空いていると、どんなにいいツールを入れても、返ってくるのは平凡な答えのままです。
大がかりに考えなくて大丈夫です。まずは1つの案件だけでいい。散らばった情報を集めて、AIに「これまでどう決めてきたか」を聞いてみる。
その一問の質が、そのまま返ってくる答えの質になります。そこから始めてみてください。
🌐 コーポレートサイト → https://deflag.net
𝕏 X(Twitter) → https://x.com/nakamae__deflag
📝 note → https://note.com/nakamae_deflag
💼 LinkedIn → https://www.linkedin.com/in/shuta-nakamae-18392828a
知見・コラム
知見
AI活用をデータガバナンスで止めないために|データオーナーとデータスチュワード
AI活用が事業側で進み、データやツールの使用許可がDX推進・情報システムにどんどん回ってくる。しかし、「そのデータの正しさは誰が担保するのか」「誰の許可で他部門と連携してよいのか」「品質が崩れたときに誰が直すのか」。これらに答えられる人が社内にいない、という手詰まりに直面しているDX推進・情報システ...
2026/7/24
知見
AI-Readyな企業とは|AI導入止まりの企業との違い
AI活用が一気に広がり、セミナーや記事、SNSで「AI-Ready(AIレディ)」という言葉を見かける機会が増えました。文字面から「AI活用の準備が整った状態」までは想像できるものの、抽象度が高く、自社が具体的にどんな状態になればAI-Readyといえるのか、そもそも「AIをもう色々入れている自社」...
2026/7/24
コラム
AIエージェント開発を始めたら、結局ずっと「要件定義」をしていた
AIエージェントを作る、と言うと、何か特別な専門技術の話に聞こえるかもしれません。私も、正直に言うと、最初は身構えていました。これは今まで自分がやってきたことと地続きなのか、それとも、まったく新しい世界なのか。近い気はしていたのですが、うまく言葉にできていませんでした。実際に手を動かしてみて、その正...
2026/7/23
記事一覧へ
お役立ち資料
営業部門のAIエージェント活用ガイド|営業現場が変わる10の業務
ダウンロード
お役立ち資料一覧を見る
Contact
まずはお気軽にご相談ください
