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13万件の自分をAIに食わせたら、人脈マップまで勝手にできた

2026/6/19

株式会社deflag CPO

中前 秀太

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  • # AI開発

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「自分が毎日、何にどれだけ時間を使っているか、正確に言えますか?」

私は、言えませんでした。

会議が多くて何時くらいだった気がする。コミュニケーションに追われていた気がする。そのような感覚はあります。
でも「正確に何に何時間使ったか」と聞かれると、答えられない。「誰と一番仕事をしているか」も、勘でしか言えない。

経営に近いところで動いていると、自分の時間の使い方くらい把握できているつもりになります。でも、いざ数字で出せと言われると、何ひとつ出てこない。

そこで、ひとつ実験をしました。

自分の活動を、まるごとAIに集めさせてみました。

私はもともと、ゲームやSaaSの開発と運用をやってきました。
そこでずっと信条にしてきたのが「まず自分で触る」ことです。
作る側が毎日使い倒していない仕組みは、どこかで嘘になる。だから今回も、自分が人柱になりました。

集まった記録は、2年ぶんでおよそ13万6千件。

自分の活動を、まるごとAIに集めさせた

最初にやったのは、自分の行動の記録を一箇所に集めることでした。

集めた先は、6つです。

  • パソコンの操作

  • Slackでのやりとり

  • ブラウザで見たもの

  • ドキュメントツールの編集

  • メール

  • カレンダーの予定

これらをすべてまとめて拾い上げました。
顧客管理の記録も、ここに加わります。期間は2年ぶん。
冒頭に書いた、およそ13万6千件という数字の中身がこれです。

なぜ、こんなにバラバラの場所から集めるのか。
理由は単純で、自分は1人でも、自分の活動は1か所に残らないからです。
考えたことはSlackに、調べ物はブラウザに、約束はカレンダーに散っていく。
1つのツールだけ見ても、自分の一日の半分も見えません。バラバラのままだと「なんとなく忙しかった」で終わる。
集めてはじめて、1人の人間の動きとしてつながります。

そのうえで、毎晩、決まった時間に日報が自動で届くようにしました。
その日の自分の動きをAIが勝手に集めて、要点をまとめ、Slackに投げてくれる。
私がやるのは、朝それに目を通すことだけです。

これが1日も欠けずに届き続けました。特別な契約も、難しい設定もなかったです。

自分の一日が、翌朝には言葉になって返ってくる。
「昨日は何をしていたか」を、記憶ではなく記録で振り返れる。
夜の自分が散らかしたものを、朝の自分が見渡せる感覚です。

ここまでで「ずいぶん大がかりですね」と感じる方もいると思います。
でも、やっていること自体は単純です。
散らばった自分の記録を、ひとつのところに集めて、毎晩まとめさせる。それだけです。難しいのは技術より、「集め続けること」のほうでした。
1日でも穴があくと、翌朝の振り返りがそこだけ抜ける。毎日続くことで、やっとこれは仕組みとして使えると思えました。

頼んでいないのに、AIが勝手に作り始めたもの

おもしろかったのは、ここからでした!

記録を集めただけのつもりが、AIが頼んでもいないものを勝手に作り始めたんです。

まず、人脈マップ。
やりとりした相手を1,329人ぶん、AIが自動でまとめていました。しかも、接触の回数でランキングまでできている。
一番上にいた社内のメンバーとは、2年で約1万2千回。数字を見て、思わず笑ってしまいました。

次に、決定の記録です。
会議やチャットで決まったことを、AIが拾って一覧にしてくれていました。「あの件、結局どう決めたんだっけ」が、検索で一発で出てくる。
決めたことが流れていって、数週間後に同じ議論をもう一度やる、ということが起きます。この蒸し返しがなくなるのは、想像以上に楽です。

もうひとつ。過去1年ぶんの自分のSlackの発言、をすべて覚えさせて、「この件、自分ならどう返すか」を似た発言から引っ張ってこられるようにもしました。
過去の自分が、相談相手になってくれるイメージです。
同じような相談を受けたとき、昔の自分がどう答えたかを、すぐ並べてくれる。自分の判断のクセが、外から見えるようになりました。

どれも、最初から狙って作ったものではありません。
記録さえ集めておけば、あとはAIが「こういう形に整理できますよ」と勝手に並べてくれる。集めることが大事なのです。

集めて、はじめて見えた「思っていた自分」とのズレ

そして、一番ぞくっとしたのが、ズレです。

集めた記録の内訳を見たとき、自分が思っていた自分と、データの自分が、はっきりずれていました。

突出して多かったのが、予定の調整と、書き物の時間でした。カレンダーとドキュメントの記録が、想像以上に大きかったです。

これは、感覚では気づけませんでした。「忙しい」という体感はあっても、何で忙しいのかは、集めて数字にしてはじめて見える。

人との関わりも同じでした。
一番やりとりしている相手は、思い浮かべた顔と合っていた。でも、2番目から下は、自分の予想とだいぶ違いました。
「最近あの人と話せていないな」と感じていた相手が、実は記録のうえではよく接していたり、その逆だったり。

「自分は、自分のことを一番わかっている」。そう思い込んでいただけでした。

冒頭の問いに戻ります。「何にどれだけ時間を使っているか」。
私はようやく、数字で答えられるようになりました。そして、その答えは、思っていたものとは違っていました。

ここまで集めても、AIに渡していないもの

ここまで読むと、ずいぶんAIに頼り切っているように見えるかもしれません。
でも、ひとつだけ、はっきり渡していないものがあります。

AIに渡したのは「集めること」と「気づくこと」だけです。
何をするかを決めるのは、最後まで自分の仕事として残しています。

人脈マップを見て「この人と最近コミュニケーション薄いから、連絡しよう」と決めるのは、私です。時間の偏りを見て「段取りを誰かに渡そう」と動くのも、私です。
AIは、材料をきれいに並べてくれる。でも、その材料をどう使うかは、自分が握り続ける。

一度、ひやりとしたことがありました。
AIがまとめた数字を見て「最近この動きが減っているな」と判断しかけたんです。でも念のため元の記録をたどると、減っていたのは活動そのものではなく、集める側が一部止まっていただけでした。
データが減ったのか、観測が減ったのか。これを取り違えると、ありもしない変化に手を打ってしまう。

ここを曖昧にすると、観測はすぐに事故ります。
AIが集めた数字を、誰も確かめないまま判断の土台にしてしまう。
気づいたら、ずれた前提のうえで意思決定が進んでいる。そういう怖さです。(もちろん、人間が確かめれば事故が一切なくなるわけではありません)

だから、線はいつも同じところに引いています。集めて気づくのはAI、決めて動くのは自分。
観測をどれだけ振り切っても、この一線は越えさせないことが大事です。

観測を振り切ると、自分が見えてくる

2年分の自分をAIに食わせてみて、たどり着いたことは、思っていたよりシンプルでした。

観測をここまで振り切ると、自分が何に時間を溶かし、誰と一番仕事をしているかが、はじめて数字で見えてきます。
感覚で「わかっているつもり」だったものが、ぜんぶ覆る。これは、やってみないと味わえない体験でした。

ただ、見えたからといって、何かが勝手に良くなるわけではありません。
見えた先で、何を変えるか。誰に時間を使うか。何をやめるか。そこを決めて動くのは、結局のところ自分です。

AIは、自分を映す鏡を、毎晩磨いておいてくれる。
でも、鏡を見てどう動くかは、人間の仕事として残る。

自分の時間の使い方を、勘ではなく数字で言えるようになりたい。
そう思ったら、まずは自分の記録を集めるところから始めてみてください。大がかりに考えなくて大丈夫です。
日報を1日ぶん、AIにまとめさせてみる。それだけでも、思っていた自分とのズレが、少しだけ見えてくるはずです。

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