
# AI開発
# AI
# AIエージェント
「自分が毎日、何にどれだけ時間を使っているか、正確に言えますか?」
私は、言えませんでした。
会議が多くて何時くらいだった気がする。コミュニケーションに追われていた気がする。そのような感覚はあります。
でも「正確に何に何時間使ったか」と聞かれると、答えられない。「誰と一番仕事をしているか」も、勘でしか言えない。
経営に近いところで動いていると、自分の時間の使い方くらい把握できているつもりになります。でも、いざ数字で出せと言われると、何ひとつ出てこない。
そこで、ひとつ実験をしました。
自分の活動を、まるごとAIに集めさせてみました。
私はもともと、ゲームやSaaSの開発と運用をやってきました。
そこでずっと信条にしてきたのが「まず自分で触る」ことです。
作る側が毎日使い倒していない仕組みは、どこかで嘘になる。だから今回も、自分が人柱になりました。
集まった記録は、2年ぶんでおよそ13万6千件。
最初にやったのは、自分の行動の記録を一箇所に集めることでした。
集めた先は、6つです。
パソコンの操作
Slackでのやりとり
ブラウザで見たもの
ドキュメントツールの編集
メール
カレンダーの予定
これらをすべてまとめて拾い上げました。
顧客管理の記録も、ここに加わります。期間は2年ぶん。
冒頭に書いた、およそ13万6千件という数字の中身がこれです。
なぜ、こんなにバラバラの場所から集めるのか。
理由は単純で、自分は1人でも、自分の活動は1か所に残らないからです。
考えたことはSlackに、調べ物はブラウザに、約束はカレンダーに散っていく。
1つのツールだけ見ても、自分の一日の半分も見えません。バラバラのままだと「なんとなく忙しかった」で終わる。
集めてはじめて、1人の人間の動きとしてつながります。
そのうえで、毎晩、決まった時間に日報が自動で届くようにしました。
その日の自分の動きをAIが勝手に集めて、要点をまとめ、Slackに投げてくれる。
私がやるのは、朝それに目を通すことだけです。
これが1日も欠けずに届き続けました。特別な契約も、難しい設定もなかったです。
自分の一日が、翌朝には言葉になって返ってくる。
「昨日は何をしていたか」を、記憶ではなく記録で振り返れる。
夜の自分が散らかしたものを、朝の自分が見渡せる感覚です。
ここまでで「ずいぶん大がかりですね」と感じる方もいると思います。
でも、やっていること自体は単純です。
散らばった自分の記録を、ひとつのところに集めて、毎晩まとめさせる。それだけです。難しいのは技術より、「集め続けること」のほうでした。
1日でも穴があくと、翌朝の振り返りがそこだけ抜ける。毎日続くことで、やっとこれは仕組みとして使えると思えました。
おもしろかったのは、ここからでした!
記録を集めただけのつもりが、AIが頼んでもいないものを勝手に作り始めたんです。
まず、人脈マップ。
やりとりした相手を1,329人ぶん、AIが自動でまとめていました。しかも、接触の回数でランキングまでできている。
一番上にいた社内のメンバーとは、2年で約1万2千回。数字を見て、思わず笑ってしまいました。
次に、決定の記録です。
会議やチャットで決まったことを、AIが拾って一覧にしてくれていました。「あの件、結局どう決めたんだっけ」が、検索で一発で出てくる。
決めたことが流れていって、数週間後に同じ議論をもう一度やる、ということが起きます。この蒸し返しがなくなるのは、想像以上に楽です。
もうひとつ。過去1年ぶんの自分のSlackの発言、をすべて覚えさせて、「この件、自分ならどう返すか」を似た発言から引っ張ってこられるようにもしました。
過去の自分が、相談相手になってくれるイメージです。
同じような相談を受けたとき、昔の自分がどう答えたかを、すぐ並べてくれる。自分の判断のクセが、外から見えるようになりました。
どれも、最初から狙って作ったものではありません。
記録さえ集めておけば、あとはAIが「こういう形に整理できますよ」と勝手に並べてくれる。集めることが大事なのです。
そして、一番ぞくっとしたのが、ズレです。
集めた記録の内訳を見たとき、自分が思っていた自分と、データの自分が、はっきりずれていました。
突出して多かったのが、予定の調整と、書き物の時間でした。カレンダーとドキュメントの記録が、想像以上に大きかったです。
これは、感覚では気づけませんでした。「忙しい」という体感はあっても、何で忙しいのかは、集めて数字にしてはじめて見える。
人との関わりも同じでした。
一番やりとりしている相手は、思い浮かべた顔と合っていた。でも、2番目から下は、自分の予想とだいぶ違いました。
「最近あの人と話せていないな」と感じていた相手が、実は記録のうえではよく接していたり、その逆だったり。
「自分は、自分のことを一番わかっている」。そう思い込んでいただけでした。
冒頭の問いに戻ります。「何にどれだけ時間を使っているか」。
私はようやく、数字で答えられるようになりました。そして、その答えは、思っていたものとは違っていました。
ここまで読むと、ずいぶんAIに頼り切っているように見えるかもしれません。
でも、ひとつだけ、はっきり渡していないものがあります。
AIに渡したのは「集めること」と「気づくこと」だけです。
何をするかを決めるのは、最後まで自分の仕事として残しています。
人脈マップを見て「この人と最近コミュニケーション薄いから、連絡しよう」と決めるのは、私です。時間の偏りを見て「段取りを誰かに渡そう」と動くのも、私です。
AIは、材料をきれいに並べてくれる。でも、その材料をどう使うかは、自分が握り続ける。
一度、ひやりとしたことがありました。
AIがまとめた数字を見て「最近この動きが減っているな」と判断しかけたんです。でも念のため元の記録をたどると、減っていたのは活動そのものではなく、集める側が一部止まっていただけでした。
データが減ったのか、観測が減ったのか。これを取り違えると、ありもしない変化に手を打ってしまう。
ここを曖昧にすると、観測はすぐに事故ります。
AIが集めた数字を、誰も確かめないまま判断の土台にしてしまう。
気づいたら、ずれた前提のうえで意思決定が進んでいる。そういう怖さです。(もちろん、人間が確かめれば事故が一切なくなるわけではありません)
だから、線はいつも同じところに引いています。集めて気づくのはAI、決めて動くのは自分。
観測をどれだけ振り切っても、この一線は越えさせないことが大事です。
2年分の自分をAIに食わせてみて、たどり着いたことは、思っていたよりシンプルでした。
観測をここまで振り切ると、自分が何に時間を溶かし、誰と一番仕事をしているかが、はじめて数字で見えてきます。
感覚で「わかっているつもり」だったものが、ぜんぶ覆る。これは、やってみないと味わえない体験でした。
ただ、見えたからといって、何かが勝手に良くなるわけではありません。
見えた先で、何を変えるか。誰に時間を使うか。何をやめるか。そこを決めて動くのは、結局のところ自分です。
AIは、自分を映す鏡を、毎晩磨いておいてくれる。
でも、鏡を見てどう動くかは、人間の仕事として残る。
自分の時間の使い方を、勘ではなく数字で言えるようになりたい。
そう思ったら、まずは自分の記録を集めるところから始めてみてください。大がかりに考えなくて大丈夫です。
日報を1日ぶん、AIにまとめさせてみる。それだけでも、思っていた自分とのズレが、少しだけ見えてくるはずです。
🌐 コーポレートサイト → https://deflag.net
𝕏 X(Twitter) → https://x.com/nakamae__deflag
📝 note → https://note.com/nakamae_deflag
💼 LinkedIn → https://www.linkedin.com/in/shuta-nakamae-18392828a
知見・コラム
コラム
「データドリブン」の前に、守破離の「守」を
「AIネイティブ」「データドリブン」は、土台を飛ばした言葉だ「AIネイティブ」「データドリブン」という言葉が、データを扱う人の新しい必須条件のように語られています。これらを使いこなせれば、過去の地道な技術はもう要らない、という空気さえあります。ですが、これらは基礎を積んだ先に見える応用の景色であって...
2026/6/19
知見
データレイクハウスとは|データウェアハウス・データレイクとの違いと、AI活用を進める会社が選ぶべき理由
経営者がAIに「一番多い失注要因はなにか」「あの時期に売上が落ちた要因は何か」と尋ねる。ところが返ってくるのは、社内の商談履歴でも議事録でもなく、どこかネットに転がっていそうな一般論を混ぜ合わせた、当たり障りのない答えです。経営者は「ChatGPTも、結局この程度か」「うちにはまだ早いな」と、静かに...
2026/6/19
コラム
暗黙知を書く仕事
「先週の売上は?」に答えられないAIエージェントAIエージェントに「先週の売上は?」と聞いたら経理が締めた数字と違う値が返ってきた、という失敗談があります。エージェント導入の現場でよく語られるもので、米国のベンチャーキャピタルa16zもデータエージェントの典型的なつまずきとしてこの例を挙げています。...
2026/6/17
記事一覧へ
お役立ち資料
営業部門のAIエージェント活用ガイド|営業現場が変わる10の業務
ダウンロード
お役立ち資料一覧を見る
Contact
まずはお気軽にご相談ください
