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DMBOKとは|初版から第3版までの変遷とAI時代の準備

2026/8/4

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  • # データ基盤

データ活用について調べていると、DMBOKという言葉に何度もぶつかります。
データガバナンスの解説記事にも、データカタログ製品の説明にも、当たり前のように出てきます。

ところが「DMBOKとは何ですか」と聞かれると、「データマネジメントの教科書のようなもの」というあたりで止まってしまうことが少なくありません。
誰が作っているのか、いつ作られたのか、今の版がいつのものなのか、そして自社がそれをどう使えばいいのか。そこまで踏み込んで説明できる人は多くありません。

本記事では、DMBOKとは何かとDAMAという団体との関係を整理したうえで、初版から第3版までを通しで扱い、各版の追加が何を意味するのかと、刊行を待たずに今から進められる準備までを解説します。

まず、データマネジメントとはデータを使える状態に保ち続ける活動のこと

データマネジメントとは、社内のデータを事業に使える状態にして、その状態を保ち続けるための活動をまとめた呼び方です。

多くの会社では、次のような困りごとが日常的に起きています。

【例】

  • 部署ごとに取引先名の表記が違い、同じ会社が別々に集計される

  • 同じ売上の数字が、資料によって微妙に食い違う

  • あのデータがどこにあるのか、担当者に聞かないと分からない

  • 過去の集計を再現しようとすると、当時の加工手順が残っていない

これらは別々の困りごとに見えますが、原因をたどると同じところに行き着きます。
データを増やす作業は業務システムを入れるたびに進む一方で、増えたデータを揃える作業と、揃った状態を保つ作業には、担当も手順も決まっていないためです。

BIツールでのレポート作成やデータ抽出も、抽出した値の表記が揃っていない、どの数字が正なのか判断がつかない、という場面では同じ要因が考えられます。

DMBOKとは|データマネジメントの知識を領域別に整理したもの

DMBOKとは、実務者の合意が取れている範囲を切り出したもの

DMBOK(Data Management Body of Knowledge)とは、データマネジメントとして何をやるのかを、領域ごとに整理してまとめた1冊のガイドブックです。
正式にはDAMA-DMBOKと表記します。

DMBOKを作っているDAMA Internationalは、これを「データの専門家が知っておくべきことをすべて集めたものではなく、この分野の基礎をなす知識を選び出して構造化したもの」と位置づけています。
あわせて、データマネジメントとして広く受け入れられている知識について、実務者のあいだで合意が取れている見方を示したものだ、とも説明しています。

従わなければならない規格でもなく、法令でもありません。特定の製品やツールの使い方も書かれておらず、どのベンダーの技術も推奨していません。
書かれているのは、どういう活動があり、それぞれが何のために行われるのか、という整理です。

DAMA Internationalとは|1980年に設立された非営利団体

DAMA Internationalは、データマネジメントに携わる専門家が集まる非営利団体です。
1980年に設立され、1988年に国際組織になりました。

DAMAは自らを、特定のベンダーから独立し、ボランティアによって運営される団体だと説明しています。

つまりDMBOKは、あるソフトウェア会社が自社製品に合わせて作った枠組みではなく、立場の違う実務者が持ち寄った内容をまとめたものにあたります。

現在は日本を含む70か国以上に支部があり、DMBOKは日本語にも翻訳されています。

刊行の経緯|2009年の初版から、策定中の第3版まで

DMBOKは1冊が出て終わったものではなく、版を重ねています。
2026年8月時点の刊行状況は次のとおりです。

英語版

日本語版

構成

初版

2009年

2011年

10の機能領域

第2版

2017年

2018年

11の知識領域と周辺の章、全17章

第2版 改定新版

2024年

2024年7月

第2版のうち4つの章と図を修正

第3版

策定中

未定

2027年の刊行を目標

いま日本語で手に入る最新のDMBOKは、内容としては2017年の第2版です。
2024年の改定新版は第2版の一部を修正したもので、新しい版ではありません。

AI活用が現実の課題になっている2026年の時点で、参照できるのは9年前に組まれた内容ということになります。

こうなると、取れる道は「新しい版が出るのを待つ」か「9年前の内容をそのまま当てはめる」かの2つに見えます。
ですが、もう1つあるのが、各版で何が追加されてきたのかを並べて今後を読む方法です。

追加の履歴には、この体系がどちらの方向に動いてきたかが表れています。
方向が分かれば、第3版に何が書かれるかを待たなくても、その方向に沿った準備は始められます。

その読み方に入る前に、まず現在の11の知識領域を確認します。

DMBOKが整理する11の知識領域

第2版のDMBOKは、データマネジメントの活動を11の知識領域に分けています。
聞き慣れない名前が並ぶので、それぞれがどういう業務の話なのかを記載します。

知識領域

どういう業務の話か

データガバナンス

誰が、どのデータを、どのような状況で、どのように利用できるのかを、全社の視点で定義し、統制する取り組み

データアーキテクチャ

社内のデータをどういう形でどこに持つかを設計する

データモデリングとデザイン

顧客や受注といった業務の対象について、どの項目をひとまとまりで持つかを決める

データストレージとオペレーション

データベースを止めずに動かし続け、バックアップを取り、遅くならないように保つ

データセキュリティ

誰がどのデータを見られるかを制御し、社外への流出を防ぐ

データ統合と相互運用性

別々のシステムにあるデータを、決まった形に揃えて受け渡す

ドキュメントとコンテンツ管理

契約書・議事録・画像のように、表の形になっていない情報を管理する

参照データとマスターデータ

顧客・商品・部署のように複数のシステムに出てくる基準データを1つに揃える

データウェアハウジングとビジネスインテリジェンス

分析用にデータを集める置き場を用意し、集計やグラフで見られるようにする

メタデータ管理

この列は何を指すのか、いつ誰が更新したのかという説明情報を記録する

データ品質

重複・欠損・表記のばらつき・古さを見つけて直す

名前は活動の対象で分かれているため、11個を眺めても自社で何から考えればよいかは見えてきません。日々ぶつかっている困りごとが、どの領域の話なのかを結びつけていくと見当がつきます。

【例】

  • 取引先名の表記が部署ごとに違う: 参照データとマスターデータ

  • あのデータがどこにあるか分からない: メタデータ管理

  • 資料によって売上の数字が違う: データ品質とデータアーキテクチャ

  • 契約書や議事録がAIから参照できない: ドキュメントとコンテンツ管理

個々の用語の短い説明は「データ×AI」を読み解くための用語集【データ編】でもまとめています。

11の領域が互いにどう関係するかという整理は、データマネジメントの全体像を扱った別の記事で行っています。ここからは、この11領域がどう組まれてきたのかに進みます。

関連記事:データマネジメントとは

DMBOK第2版|何が加わり、それが何を意味するのか

知識領域として増えたのは「データ統合と相互運用性」の1つだけ

初版のDMBOKは、11ではなく10の領域で構成されていました。
第2版の11領域と並べると、次のようになります。

初版(2009年・10領域)

第2版(2017年・11領域)

データガバナンス

データガバナンス

データアーキテクチャ管理

データアーキテクチャ

データ開発

データモデリングとデザイン

データオペレーション管理

データストレージとオペレーション

データセキュリティ管理

データセキュリティ

(なし)

データ統合と相互運用性

ドキュメントとコンテンツ管理

ドキュメントとコンテンツ管理

参照データとマスターデータ管理

参照データとマスターデータ

データウェアハウジングとビジネスインテリジェンス管理

データウェアハウジングとビジネスインテリジェンス

メタデータ管理

メタデータ管理

データ品質管理

データ品質

表のとおり、名称変更や細かな分類変更の他に、第2版で知識領域として純粋に増えたのは「データ統合と相互運用性」の1つだけです。

データ統合と相互運用性とは、別々のシステムにあるデータを、決まった形に揃えて受け渡す活動です。

販売管理システムの受注データを分析用の置き場に移す、会計システムと在庫システムで商品コードを揃える、といった作業がここに入ります。

初版の時点では、システム間のデータの受け渡しは、それぞれのシステムを作るときや動かすときの作業の一部として扱われていました。

第2版で独立したということは、データを移して揃える作業そのものを、個々のシステムから切り離して設計し運用する対象として扱うようになった、という変化を示しています。

社内にシステムが1つか2つしかなければ、この作業は開発の付随作業で済みます。
販売管理、会計、勤怠、顧客管理と数が増えていくと、どこからどこへ何を渡すかの全体を決める役割が必要になります。

この段階に多くの企業が入ったことが、領域として独立した背景にあたります。

領域の外側に加わった5つの章

第2版で領域ではなく、章として新しく加わった項目が全部で5つあります。

11の知識領域は、データマネジメントとして手を動かす活動の単位です。
対して章は、活動そのものではなく、その活動を実際に回すために必要なことを扱います。

つまり第2版の追加は、やることを増やしたのではなく、やることが社内で回るようにする章を足した、という構成になっています。

新しく加わった章

概要

データ取扱倫理(第2章)

そのデータを集めてよいか、その使い方をしてよいかの判断。技術的に可能かどうかとは別の問い

ビッグデータとデータサイエンス(第14章)

大量のデータから傾向を見つけたり予測したりする分析の手法

データマネジメント成熟度アセスメント(第15章)

自社のデータマネジメントが今どの段階にあるかを測る考え方

データマネジメント組織と役割期待(第16章)

どういう役割を置き、それぞれに何を期待するのか

データマネジメントと組織の変革(第17章)

決めたことを社内に定着させる進め方。方針を作っただけでは現場の手順は変わらないという前提に立つ

2024年の改定新版で、データ品質の観点に最新性が加わった

第2版はその後、2024年に改定新版が出ています。

内容の変更として具体的なのが第13章データ品質です。
データ品質を測る標準的な観点として、最新性が追加されました。
もともとの項目は、正確であること、必要な項目が揃っていること、重複がないこと、必要なときに使えること、といった観点でした。

これは記述の整理にとどまる変更ではありません。
データが揃っていて重複もない状態でも、中身が3か月前の実態であれば、それを根拠にした判断は外れます。
人が集計していた時期は担当者が「この数字は先月末時点」と補って読んでいましたが、AIに社内データを参照させると、その補いが入らないまま答えが出ます。

版の変化から読める、関心の移り方

初版が示したのは、データマネジメントとして何をやるのかという活動の一覧でした。
10の機能領域を並べ、それぞれの活動と目的を記述する構成です。
この時点の関心は、やるべきことの範囲を確定させることにありました。

第2版で足されたものは、領域の中身ではありませんでした。
増えた領域は1つで、残る5つの章は前項のとおり各領域のやることをどう回るようにするかでした。
2009年から2017年のあいだに一覧そのものは世の中に共有され、共有されたうえで残った課題が、一覧を持っているのに社内で進まないことだった、という順序で読めます。

そして2024年の改定で、データ品質の観点に最新性が加わりました。
データが揃っているかを問う段階から、そのデータが実態を映しているかを問う段階に入っています。

3つを続けて見ると、関心の移り方はこうなります。
やるべきことを確定させることから、それを組織で動かすことへ。
そして、データが今の実態を映しているかを問うことへ。
この最後の動きは、データを読む相手が人からAIに変わっていく流れと、同じ方向を向いています。

DMBOK第3版|2026年8月時点の策定状況

2025年6月に始動し、2027年の刊行を目標に進んでいる

DAMA Internationalは2025年6月25日、第3版にあたるDAMA-DMBOK 3.0の策定プロジェクトを開始しました。刊行は2027年を目標としています(出典: DMBOK 3.0のよくある質問)。

策定は、特定の執筆者が書き上げた原稿を公開するのではなく、世界の実務者から意見を集めながら進める手順が取られています。

議論されている論点|AIガバナンス・クラウド・現代的なデータ基盤

第3版で取り込まれる方向として公表されているのは、これまでの基本的な考え方を残したうえで、AI、クラウド、現代的なデータプラットフォームといった新しい論点を加えることです(出典: DMBOK 3.0プロジェクトの概要)。

方向がより具体的に分かるのは、分野別編集者の担当領域です。
データガバナンス、データ品質、メタデータ管理といった既存の領域と並んで、AIガバナンス、サステナビリティ、倫理的なデータの取り扱いが担当の枠として置かれています。

AIガバナンスとは、AIに何を任せて何を任せないかを決め、出てきた結果について誰が責任を持つのかを定める活動です。
データについて誰が何を決めるかを扱うデータガバナンスに、AIの使い方についての取り決めを重ねる形になります。

改訂が必要になった理由として、次の変化が挙げられています(出典: 改訂の背景)。

  • AI・機械学習・クラウド、そしてデータが発生してすぐ扱える仕組みといった技術の広がり

  • 各国のデータ保護規制の増加

  • CDO(最高データ責任者)という役職とデータガバナンス機能の成熟

  • データ管理を中央に集約する形から、部門ごとに任せる形や、使う人が自分で扱える形への移行

第3版ではあわせて、紙の書籍だけでなくデジタルの形で参照できるようにする方針も示されています。

知識領域の構成そのものも見直し対象で、まだ確定していない

11の知識領域が第3版でどうなるかは、2026年8月時点では決まっていません。
DAMAは、編集委員会が構成の見直しを進めており、コミュニティからの意見を踏まえて判断すると述べています。

つまり、領域の数が増えるのか、既存の領域の中に取り込まれるのか、並べ方が変わるのかは、現時点では公表されていません。

ですが、構成が未確定であることが、待つ理由にはなりません。
DAMA自身、第3版の刊行を待たずにAIの論点で動き出しています。
2026年3月には、生成AIをデータマネジメントの実務に使うための活動グループとしてGenAI4DMを発足させ、データの品質やプライバシー、そのデータがどこから来たのかの記録といった観点について、DMBOKの考え方に沿った形で生成AIを使う進め方を扱うと公表しました。

体系の改訂とは別に、既存のDMBOKの考え方をAIの文脈に当てはめる作業が並行して進んでいることになります。

第3版を待たずに、今から進められること

第3版の刊行を待つ必要はありません。
ここまで見てきた追加の履歴から、体系がどちらの方向に動いてきたかは読み取れており、その方向に沿った準備は現在の第2版のままでも進められます。

既存の11領域のまま、AIが読む前提で優先順位をつける

まず取れる進め方は、11の知識領域を自社に当てはめて、どこから手を付けるかの順番を決めることです。

判断の基準になるのが、ここまで見てきた変遷の方向です。
データが揃っているかを問う段階から、そのデータが実態を映しているかを問う段階へ動いてきました。
この先にあるのは、人が補いながら読む前提から、AIが直接読む前提に変わることです。

この基準を置くと、どの領域が先かが決まってくるかと思います。
AIに社内データを参照させたときに答えの誤りに直結するのは、表記が揃っていない領域(マスターデータ、およびデータ品質)と、説明情報が記録されていない領域(メタデータ管理)です。

自社の現在地を確認しておく

もう1つ取れる進め方は、自社のデータマネジメントが今どの段階にあるかを確認しておくことです。

これは体系の想定に沿った使い方です。
第2版に「データマネジメント成熟度アセスメント」の章が置かれていること自体が、DMBOKを全部やるための一覧ではなく、現在地を測るために引くものとして使う根拠になります。

測り方を細かく組む必要はありません。
11の領域それぞれについて、手が付いているか、担当が決まっているか、決まった手順があるかを見ていくだけでも、空いている領域は見えてきます。

確認しておくと、第3版が出たときの動きが変わります。
自社のどこが空いているかを把握していれば、追加された記述のうちどれが自社に関わるかをすぐ判断できます。把握していなければ、また全体を読み直すところから始まります。

担当者1〜数名の兼務体制で踏める最初の一歩

ここまでの2つを実際に始めるときは、進め方そのものを自社の規模に合わせる必要があります。専任の組織やCDOを置いていない体制では、特にそうなります。

DMBOKの解説では「まずデータガバナンス委員会を設置する」という進め方が示されることがありますが、これは専任者を置ける規模を前提にした形です。
担当者が1人か数人で他業務と兼務している状態では、委員会を作っても議題を用意する工数が確保できず、開かれないまま残ります。

この規模で踏めるのは、対象を絞ることになるかと思います。11の領域から1つ、そのなかからデータの対象を1つ選び、そこだけ決めるところまでに留めます。

【例】最初に決める範囲の絞り方

  • 領域: 参照データとマスターデータ

  • 対象データ: 取引先マスタ(顧客・商品・部署のうち、いちばん困っているもの1つ)

  • 決めること: 正式名称のルール、正とするシステム、追加や変更を承認する人

1つの対象で手順が回り始めてから、次の対象に広げる順序が現実的ではないかと想定しています。

まとめ

DMBOKとは、DAMA Internationalという非営利団体が、データマネジメントとして何をやるのかを、領域ごとに整理してまとめた1冊のガイドブックです。

これまで履歴から、やるべきことを確定させることから、それを組織で動かすことへ。
そして、データが今の実態を映しているかを問うことへ、という関心の移り方が読めます。

第3版は2025年6月に策定が始まり、2027年の刊行を目標に進んでいます。
AIガバナンス、サステナビリティ、倫理的なデータの取り扱いが編集体制に枠として置かれている一方で、11の知識領域の構成がどうなるかは2026年8月時点で確定していません。

ですが、この未確定は、待つ理由にはなりません。
向かっている方向はこれまでの履歴から読み取れており、AIが読む前提で11領域に優先順位をつけること、自社の現在地を確認しておくことは、いま第2版のままでも進められます。

刊行を待って全体を読み直すより、方向の分かっている範囲から手を付けておくほうが、第3版が出たときに使える状態に近づきます。

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