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朝、Slackを開く。
いつもなら、AI秘書がまとめた昨日の日報が、いちばん上に届いている。
その朝は、何もありませんでした。
あれ、壊れた?壊したかな。
これは、自分の活動をまるごとAIに集めさせている人柱実験の、地味な裏側の話です。
前に、2年分の自分をAIに読み込ませたら人脈マップまで勝手にできた、という記事を書きました。
今回はその秘書が黙り込んだ日の話をします。
同じように「自動でなにか動かしてみたい」と思っている方には、たぶん他人事ではありません。
関連コラム:13万件の自分をAIに食わせたら、人脈マップまで勝手にできた
私は毎晩、AI秘書に日報を作らせています。
日中の私の動きを集めておいて、夜のうちにまとめ、朝いちばんにSlackへ置いておく。
その仕組みが毎晩きちんと動いていました。
それが、ある朝だけ無言だった。
最初に疑ったのは、AIの中身です。
プロンプトを壊したか。集めたデータの形が変わって、まとめに失敗したか。賢いはずのAIが、賢さでつまずいたんだろうと思いました。
でも、調べていくうちに分かってきたのは、全く別のことでした。
止まっていたのは、もっと手前でした。
「手元で動かすと動くのに、放っておくと死ぬ」という、地味で物理的な都合の方でした。
自動化でいちばん厄介なのは、AIの賢さではなく、AIを動かす土台が、こちらの想像以上に気難しいからでした。
順番に、踏んだ罠を並べていきます。どれも、笑ってもらっていい話です!
記録を集める担当は、部屋の隅に置いた1台のMacです。
画面もつながず、ただ電源を入れて動かしっぱなしにしている。人間が触らなくても、ずっと黙々と私の行動を拾い続けてくれる。はずでした。
ところがそのMacは、夜中に勝手に寝ていました。
基本的にスリープにならない設定にしてるのですが、なにかが原因でPCがスリープモードに入ってました。
その分、収集と整理作業がまるごと止まっていました。
結果、まとめる材料が一件もなく、日報が空っぽでした。
AIがサボったからではなく、集める担当が、誰も見ていない間にぐっすり眠っていたからでした。
優秀な新人に夜勤を任せたつもりが、消灯と同時に仮眠していた、そんな感覚でした。
次に踏んだのは、許可の壁です。
今のPCは、中で動くプログラムに、勝手に何でも見せたりはしません。
「この棚を見ていい」「このフォルダに入っていい」と、人間が一つずつ許可を与えて、はじめて触れる。セキュリティとしては正しい設計です。
問題は、自動で動かしたいプログラムにも、この許可がいちいち必要になることでした。
とくに手こずったのが、クラウドと同期しているフォルダです。
ここはOSがとりわけ厳重に守っていて、自動で中身を触ろうとすると、弾かれる。手で開けば見えるのに、自動だと門前払い。
例の「手元では動くのに、自動だと死ぬ」が、ここでも起きます。
さらに理不尽だったのが、再起動です。
せっかく一つずつ与えた許可が、再起動したあとに一部リセットされていることがありました。昨日まで通れていた扉が、朝になったら、また鍵がかかっている。
ヒヤッとしました。動かない原因がプログラムの中ではなく、その外側の、OS側にあるとは思っていませんでした。
私は自分の記録を、複数台のMacから集めています。(外で作業する用、家用など)台数が増えると、便利になる代わりに、雑用も増える。
たとえばメールの記録を拾う部分。
これが、パソコンごとに「はじめまして」のログインをやり直さないと、動いてくれませんでした。
1台目で済ませたから2台目も大丈夫とはいきません。やり直しを忘れると、収集はエラーも出さず、ただ静かに固まる。
賢さは関係なく、出てくるのは、突然のスリープ、許可設定、やり直しのログイン、ずれる記号。
自動化を止めるのは、いつもこの手の、名前を言うのもばかばかしい雑用ばかりでした!
ここまで読んで、「それ全部、自前のパソコンで抱えているからでしょう。まるごとクラウドに載せれば解決では」と感じる方もいると思います。
半分は、その通りです。電源の心配も、OSの許可の壁も、クラウドならかなり減ります。
でも、クラウドはクラウドで、別の難しさがあります。
自分の行動の記録は、かなり生々しいデータです。
それをどこまで自分の手の外に預けるか、という問題が出てくる。
動かすための鍵やパスワードを、どこに置いておくのかも考えないといけない。費用は使った分だけ積み上がるし、一度どこかのサービスに合わせて作り込むと、あとから別の場所へ移しづらくもなる。
なにより、止まったときに中が見えにくい。
自前のパソコンなら、最悪その場へ行って画面をのぞける。クラウドだと「なぜか動いていない」の「なぜか」にたどり着くまでが遠いのです。
ローカルで戦う相手が「電源と許可」なら、クラウドで戦う相手は「見えなさと、預ける不安」です。
どちらが上、という話ではありません。置き場所を変えても、難しさが消えるのではなく、難しさの種類が入れ替わるだけでした。
結局、どこで動かすにしても、誰かが「ちゃんと動いているか」を見張っていないと、仕組みは静かに止まる。そこは変わらないんです。
この実験をやってみて、いちばん腹落ちしたのは、ここです。
自動化の出来を決めるのは、AIがどれだけ賢いかではありませんでした。
賢さは、もう十分です。圧倒的に自分より賢いなと感じます。ただ最後にものを言うのは、寝ないように電源の設定を正しくし、許可の扉を正しく開け、ログインをやり直し、毎朝「今日もちゃんと動いたか」を確かめる。その地味な運用の方です。
これは、がっかりする話ではないと思っています!むしろ逆です!
AIに任せれば全部きれいに片づく、という幻想が一つ消えて、「人間が握っておくべき場所」がくっきり見えた。
前回、私はこう書きました。集めて気づくのはAI、決めて動くのは自分です。
今回それに一つ足すなら、動いているかを見張るのも、まだ人間の仕事だということです。
派手な成果の裏側には、こういった泥くさい番をしている誰かがいます。
自分で組んで、自分で踏んで、それがよく分かりました。
これから何かを自動で動かしてみたい方へ。
最初の一歩は、立派な仕組みを作ることではありません。小さく一つ動かしてみて、それが明日の朝もちゃんと動いているか、を見てみる。
たぶん、何度かは黙り込みます。そのとき「あれ、壊れた?」と笑いながら原因を探せたら、もう半分は運用できています。
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